宮城県図書館だより「ことばのうみ」第72号 2022年7月発行 テキスト版
おもな記事
巻頭エッセイ『「歴史」が示してくれるもの』 株式会社マイナビフットボールクラブ 前代表取締役社長 粟井 俊介
世界遺産・姫路城がそびえる兵庫県姫路市で生まれ、小学校入学直後に大阪府東大阪市に引っ越した私は、「歴史」を近くに感じられる環境で育った。まわりに当たり前のようにあった古墳・史跡を徒歩や自転車でめぐり、図書館で郷土資料を調べることが好きな「文科系」な少年時代、歴史小説もよく読んだ。中でもやはり、地元・大阪にゆかりある司馬遼太郎作品には、それぞれの時代に生きた人物たちの生々しい息づかいや葛藤がふんだんに描かれ、大いに影響を受けたことを憶えている。それらがきっかけとなり、大学では文学部で日本史学を専攻。図書館の地下書庫でたくさんの歴史書や古文書に埋もれ過ごす日々。小説や幼少のころに触れた世界とはまた異なる、膨大な史料に基づいて論理のパズルを組み立てる実証的アプローチを学んだ。卒業から二十年が経ち、歴史とは 一見縁遠い仕事に務めて久しいが、学んだ手法は活きている。今になって改めて、歴史とは人々が悩み考え、困難に立ち向かった証であり今に学び活かすヒントが詰まっているように思う。そして本は、社会人として現代を暮らす中での悩み、迷いを解決する栄養剤。私も今に生きている限り、次代に遺す「証」を作 りあげたいと強く思う一人である。
著者紹介
粟井俊介(あわい・しゅんすけ)
株式会社マイナビフットボールクラブ前代表取締役社長。2022年7月1日より、同社非常勤取締役。仙台市を本拠地とする女子プロサッカーチーム「マイナビ仙台レディース」を運営し、2021年9月から開幕した日本初の女子プロサッカーリーグ・WEリーグへ参戦。22年女子W杯、23年パリ五輪で活躍できる"なでしこジャパン"選手輩出に向けて奮闘中。
〈特集〉みやぎのスポーツを応援してみませんか
みやぎのスポーツチームといえば、皆さんなにを思い浮かべますか。今回は県内を本拠地とする主なプロスポーツチームを紹介し、魅力を知っていただくことはもちろん、宮城県図書館にも関連資料の所蔵があることを少しだけアピールする、そんな特集を組んでみました。最後まで読んでいただけたらうれしい限りです。
◆宮城県を本拠地とするプロスポーツとその歩み
宮城県内を本拠地とする主なプロスポーツチームは、野球であれば「東北楽天ゴールデンイーグルス」、サッカーであれば「ベガルタ仙台」と「マイナビ仙台レディース」、バスケットボールであれば「仙台89ERS」があります。
東北楽天ゴールデンイーグルス
2004年11月、50年ぶりの日本球界への新規参入球団として「東北楽天ゴールデンイーグルス」が発足しました。翌2005年、初のシーズンは97敗で最下位に終わりましたが、少しずつプロ野球チームとして力をつけ、2009年、野村克也監督が最後に指揮を執ったシーズンで初めてクライマックスシリーズに進出しました。2011年、東日本大震災を経て、2013年、星野仙一監督の指揮の下初めての日本一に輝き、被災地東北に感動と希望を届けました。現在18年目のシーズンを迎えています。メイン球場は「楽天生命パーク宮城」。メインマスコットは「クラッチ」。
ベガルタ仙台
1999年、Jリーグの2部制開始とともにJ2に参加し、クラブの名称をそれまでの「ブランメル仙台」から「ベガルタ仙台」に改称しました。2001年、東北地方のクラブとして初のJ1昇格を決めましたが、2003年にはJ2への降格が決まりました。2009年、J2初優勝によりJ1の舞台に返り咲き、2011年は4位、2012年はチーム最高の2位でシーズンを終え、J1で闘えることを証明しました。2021年、19位という成績でJ2降格となりましたが、今シーズン、J1の舞台へ、1年での復帰を目指しています。メインスタジアムは「ユアテックスタジアム仙台」。メインマスコットは「ベガッ太」。
マイナビ仙台レディース
福島県双葉郡楢葉町・広野町のJヴィレッジを拠点として活動していた「東京電力女子サッカー部マリーゼ」が、2011年の東日本大震災により休部となり、2012年2月、株式会社ベガルタ仙台に移管されて「ベガルタ仙台レディース」が発足しました。翌年2013年からはなでしこリーグ1部(アマチュアリーグ)に参戦しました。2017年に株式会社マイナビとタイトルパートナーシップを締結して「マイナビベガルタ仙台レディース」に名称を変更。2020年には株式会社マイナビに経営権が譲渡され、2021年9月の日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ(Women Empowerment League)」発足に合わせて「マイナビ仙台レディース」が始動しました。メインスタジアムは「ユアテックスタジアム仙台」。マスコットは「マイビィ」。
仙台89ERS
2005年、bjリーグの発足とともに始動。本拠地の仙台は1889年「市制町村制」がはじまると同時にでき、市制100年の1989年に政令指定都市となったことから、仙台のスタートを象徴する「89」の数字を取り、「仙台89ERS」という名称になりました。2016年、Bリーグが発足。B1東地区で開幕を迎えましたが、当シーズンは成績が芳しくなく、B2リーグに降格しました。今シーズン(2021-22)、B2東地区を2位で終え、2022年5月13日(金)・14日(土)・16日(月)にアウェーで開催された「B2プレーオフ2021-22 セミファイナル」で香川ファイブアローズに勝利し、B1昇格が決定しました。2022-23のシーズンは6季ぶりにB1でプレーすることになります。メインアリーナは「ゼビオアリーナ仙台」。マスコットは「ティナ」。
(2022/5/18現在)
◆みやぎのプロスポーツ関連資料がたくさん!
宮城県図書館でもみやぎのプロスポーツ関連資料をたくさん所蔵しています。今回は所蔵している資料を少しだけ紹介します。この機会にぜひご利用ください。
【一般図書コーナー】
一般図書コーナーにはさまざまなスポーツに関連した資料がたくさんあります。競技に関する本はもちろん、選手の書いたエッセイなども配架されています。これらの本は借りることができます。
❶『東北楽天ゴールデンイーグルス あるある+』
著者:原田たかし
出版者:TOブックス出版年:2015.5
分類:783.7
❷『3000安打の向こう側』
著者:松井稼頭央
出版者:ベースボール・マガジン社
出版年:2016.4
分類:783.7
❸『だから、ベガルタ仙台が面白い! : ベガルタ仙台応援BOOK!』
著者:千葉直樹ほか
出版者:ベースボール・マガジン社
出版年:2012.12
分類:783.47
❹『在る光 : 3.11からの ベガルタ仙台』
著者:板垣晴朗
出版者:スクワッド
出版年:2017.2
分類783.47
【みやぎ資料室】
みやぎ資料室では、宮城県や宮城県にゆかりのある人物に関する資料をジャンル問わず収集・保管しています。ここにある資料は館内でのみ利用することができます。
❶『EAGLES MAGAZINE, Vol.108 : 2018 シーズン開幕特別号 2018シーズン 選手名鑑』
著者:楽天野球団
出版者:山口北州印刷
出版年:2018.3
分類K783
❷『いたずらっ子ベガッ太参上』
著者:ベガッ太
出版者:実業之日本社
出版年:2013.12
分類:K783
❸『カントリーロード, 2014-15 : ベガルタ仙台メモリアルデータブック』
編集者:[カントリーロード2014-15編集委員会]
出版者:ベガルタ
仙台・市民後援会
出版年:2015.2
分類:K783
❹『Yelloh!89ers復活応援版 : 仙台の仲間で支えあおう!』
著者:デイリー・インフォメーション東北支社
出版者:デイリー・インフォメーション東北支社
出版年:2011.10
分類:K783
◆宮城県図書館の「叡智の杜Web」でスポーツ関連記事を探してみよう!
「どの雑誌の何号に掲載されているかわからないけれど、スポーツ選手のインタビュー記事を読みたい」と思った時は使ってみてください。便利なデータベースが用意されています。
― 「宮城県内公共図書館所蔵郷土資料関係論文目録」で掲載号を調べる ―
①「宮城県内公共図書館所蔵郷土関係論文目録」をクリックします。
②チーム名や選手名を入力し「検索」をクリックします。
③検索結果が表示されます。記事の掲載誌と掲載号がわかります。
図書館 around the みやぎ
シリーズ第64回 亘理町立図書館 館長 丸子 城(まるこ じょう)
JR亘理駅に隣接している城風の建物に図書館があります。郷土資料館との複合施設で、「悠里館」の愛称で住民に親しまれています。ここに来れば亘理の歴史が学べるように、図書館では郷土資料の充実に力を入れています。
明治から大正時代、町内に通俗図書館が設置され、その時に所蔵していた和漢古書が各公民館図書室に引き継がれ、現在の図書館に移管されました。江戸時代の糸綴じの本もあり、元宮城県図書館司書の萱場健之先生にご指導いただいて資料を整理し、それらをまとめ平成26年に「亘理町立図書館和漢古書目録」を発刊しました。また、毎年萱場先生による「図書館古典講座」を開催し、古典に親しむ機会をつくっています。
町では、新型コロナウイルス感染症の流行により、オンラインの活用が推奨されていることから、令和3年4月1日、悠里館の「天守閣」にコワーキングスペースを開設しました。町を一望しながら仕事に取り組むことができ、町内外の皆さんにご利用いただいています。
図書館では、他にも住民票や戸籍謄抄本等の発行業務も行っており、住民サービスに努めています。これからも地域に根ざした利用しやすい図書館を目指していきたいと思っています。
亘理町立図書館
蔵書数/174,151冊(令和4年3月31日現在)
開館時間/火~日曜日 午前10時~午後7時
※GW期間・11/3は、午前10時~午後5時
- 休館日/月曜日、祝日(GW期間、11/3は特別開館)、館内整理日、年末年始、特別整理期間
住所/〒989-2351
宮城県亘理郡亘理町字西郷140番地
TEL:0223-34-8700 FAX:0223-34-8704
図書館員から読書のすすめ
『南極日和:極地を「仕事」にする人たち』 「南極日和」制作班【著】実業之日本社【出版】
心がときめき、遠い地に思いを馳せる。読書をしてこのような思いをもつことは少なからずあるのではないでしょうか。私にとってまさにそれが本書でした。
2010年から2014年までBS朝日で放送された「南極日和」をもとに編集された本書は、南極で働く人々のメッセージが紹介されています。南極で働く人々というのは、いわゆる南極観測隊です。南極観測隊と一言で言っても、そこには様々な職業の人々がいてそれぞれの担当に力を尽くしています。オーロラ、気象、隕石、雪氷、生物等の観測者。そして、その観測を支える建築や調理、医療等の担当者に加え教員まで。各分野1名しかいないため、各自の担当に力を注ぎつつ、「手空き総員」の掛け声のもと全員が協力して局面を乗り越えていく様子は、どの組織にも当てはまる大事な姿勢だと改めて気付かされます。特に南極のような人も設備も限られていて、逃げ場がないような状況下では、信頼関係と人間力が重要なのだと教えられます。
極地である南極は、私たちからすると過酷な地、危険な地とイメージしがちですが、本書に掲載されている隊員たちの写真は実に生き生きとしていて、多くの隊員が口をそろえてもう一度南極に行きたいと言っているのが印象的です。南極の何がそんなに人を魅了し、惹きつけるのでしょうか。
極限の中での基地設営やロケット打ち上げ、衛星中継による史上初の授業など、読み進めていくと、それぞれが職責を全うし、成果を上げていく事への大きな達成感や充実感がよく伝わってきます。中でも注目したいのは、それぞれの隊員が述べている「私にとって南極とは」です。そこには、「自然の大きさ」「圧倒的」「見果てぬ夢」「地球を感じられる所」の言葉が…。なるほど、観測隊の方々がなぜ南極に魅了されているのかがよく分かりました。そして、本を読んだだけの私なんかよりももっと心がときめいていることが。
本書のプロローグにはこう書かれています。「南極―そこは地球がもっとも地球らしく 人間がもっとも人間らしくいられる場所」なんと心を揺さぶられる言葉なのでしょうか。
この本を手に取った方と共に、遥か彼方の極地に思いを巡らせ、ロマンを感じることができたらうれしい限りです。
資料奉仕部 児童視聴覚班 菊地 暁人
図書館からのお知らせ INFORMATION
■県制150周年記念企画展「図書館資料にみるみやぎの黎明」および修復完了記念展示『〔勤政庁絵図〕』
宮城県は、旧仙台藩を中心とする「仙台県」から改称するかたちで1872年に成立し、2022年に誕生150周年を迎えました。これを記念して、宮城県図書館が所蔵する明治期の資料の展示を通じて黎明期の宮城県のすがたを振り返る企画展を開催しています。また、当館が実施している貴重資料保存修復事業により、令和2年度に修復が完了した絵図『〔勤政庁絵図〕』のパネルもあわせて展示しています。入場は無料です。ぜひご覧ください。
- 日時 令和4年6月4日(土)から8月28日(日)まで 図書館開館日の午前9時から午後5時まで
- 場所 宮城県図書館2階 展示室
- お問い合わせ みやぎ資料室(022-377-8483)
■一般展示「森鴎外 没後百年(生誕百六十年)」
3階一般図書フロアでは「森鴎外 没後百年(生誕百六十年)」と題して、森鴎外に関連する当館所蔵資料の展示を行っています。展示中の資料は、借りることができます。どうぞ御利用ください。
- 日 時 令和4年5月14日(土)から8月5日(金)まで
- 場 所 宮城県図書館3階一般図書フロア展示コーナー
- お問い合わせ 一般図書班(022-377-8481)
この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第72号 2022年7月発行。