宮城県図書館だより「ことばのうみ」第55号 2016年9月発行 テキスト版
おもな記事。
巻頭エッセイ 『海のようなシェイクスピア』シェイクスピア・カンパニー主催 下館和巳
私たちは、20年以上にわたってシェイクスピアを標準語ではなくて東北のことばで、それも設定を東北に移し替えて上演し続けている、アマチュアの劇団です。私たちの目の前に広がる太平洋の海は、遥か遠い存在に思われていたこのイギリスの劇作家を、東北の私たちと結びつける海です。北に向かえばアメリカがあってその向こうにイギリスがあり、南に向かえばインド洋の先に大西洋があって、そこに日本よりも小さなイギリスの島が浮かんでいるのです。
シェイクスピアをこよなく愛していた19世紀のイギリスの詩人ジョン・キーツは、「シェイクスピアは海のようだ」と書いています。どういう意味なのでしょうか? キーツは、季節や気候によって魔法のように変化する海に、シェイクスピアを見たようです。
私たちは創設以来、東北のみならず東京、果てはイギリスのエディンバラまで足を延ばして旅をしてきましたが、2011年の震災以降、気がつけばなぜか、今まで背中を向けてきた三陸の小さな湊を歩き始めていました。そこで、おじいちゃんおばあちゃん、そのそばにいる子どもたちの笑い声を聞いて海を見る時、私たちは海の大きさやその深さ、そして深さに育まれている海の幸の豊かさとシェイクスピアの豊饒を思うのです。
著者紹介。
下館和巳(しもだて・かずみ)
1955年塩釜市生まれ シェイクスピア・カンパニー主宰 東北学院大学教養学部教授 ケンブリッジ大学客員研究員
(1992)ロンドン・グローブ座ダイレクティング・フェロー
(2002)主著に『東北シェイクスピア脚本集全5巻』(ココ出版)『東北のジュリエット』(河北出版センター)
〈特集〉図書館をもっと楽しむ! ―新聞・雑誌室―
図書館はよく利用するけれど、本を返して、借りて、帰る……それがいつものコースという方、多いのではないでしょうか。
今回は、新聞・雑誌室についての特集です。ここには、雑誌10,500、年鑑・年報3,700、行政資料3,000、新聞650等、合計約18,000タイトルもの資料があります。県立図書館として、大切な資料を欠号なく保存し、県内市町村図書館の資料保存センターとしても機能するようバックアップに努めています。
そんな新聞・雑誌室の様々な資料を簡単に紹介します。
いつものコースにちょっとプラス。新聞・雑誌室で、もっと図書館を楽しんでみませんか?
■カウンター
「コピーしたい」「書庫の資料が見たい」「マイクロフィルムを見てみたい」「探し方がわからない」などなど、とにかくまずはなんでもカウンターの職員に声をかけてください。カウンター脇ではミニ展示をしています。季節やイベントに合わせたテーマや、「雑誌の創刊号」といった新聞・雑誌室ならではの企画もあります。ぜひご覧ください。
■ビジネス支援コーナー
階段を上ってすぐの26番の書架に、仕事に役立つ資料を集めた「ビジネス支援コーナー」があります。本来であれば分類ごとに別の棚に置かれている“仕事に役立つ資料”をこの場所にまとめ、ビジネスに関する情報が探しやすくなっています。中小企業支援の配布用冊子やチラシ等もありますので、ご自由にお持ち帰りください。
■年鑑・年報
『読売年鑑』のような総合的な内容のものをはじめ、各種統計年鑑・本の年鑑・映画年鑑など多岐に渡る分野の資料が並んでいます。『国勢図会』『理科年表』『朝日キーワード』等もここにあります。
■行政資料
国・地方公共団体やその関連団体が発行している資料です。代表的なものに、白書類(『環境白書』『食育白書』など)や統計資料(『国勢調査報告』など)などがあります。宮城県図書館では、発行省庁別に並べています。レポートの作成などに役立つ資料群をじっくり見だすと、ちょっとした発見があるかもしれません。
※宮城県および県内自治体発行の行政資料は、みやぎ資料室にあります。
■雑誌
自由に閲覧できる開架のスペースには、購入雑誌を中心に、直近の4号分を置いています。本屋さんでは目にしないものもたくさんあります。職員がオススメする雑誌等をいくつか左下面に紹介しますので、ぜひ手にとってみてください! バックナンバーや古い雑誌などは、閉架書庫にあるかお調べしますので、お気軽にカウンターへご相談ください。
※一部の雑誌については、最新号をカウンター内に置いているものがあります。
※宮城県内で発行された雑誌はみやぎ資料室にあります。
■データベース
「あの記事、いつの新聞で見たっけ?」「あれはいつの出来事だっただろう?」そんなときはデータベースがおすすめです。館内の端末を使って、河北新報(1991(平成3)年8月~)、朝日新聞(1984(昭和59)年8月~)の記事を検索することができます。例えば、“この宇宙船のような宮城県図書館はいつ開館したか”を河北新報データベースで、「宮城県図書館」「開館」「泉区」などのキーワードで検索すると、ヒットした記事の中から、1988(平成10)年3月21日に開館し、オープン当時の様子が載っている記事を見つけることができます。ヒットした記事はそれぞれ切り抜きイメージで見ることができますよ。
■資料検索端末(館内OPAC)
館内の資料を検索するための専用の端末です。検索して目的の資料を探したら印刷ボタンを押し、出てきた資料請求票の、背ラベル1段目の数字の前に、下記のアルファベットがついていたら、新聞・雑誌室の資料です。
PN : 新聞 P : 雑誌 PA : 年鑑・年報
G : 行政資料 PF:外国語雑誌
■新聞
全国紙(『朝日新聞』『産経新聞』『日本経済新聞』『毎日新聞』『読売新聞』)をはじめ、『河北新報』などの地方紙、『大崎タイムス』などの地域紙から、スポーツ紙『日刊スポーツ』、英字新聞『The Japan Times』、『日刊工業新聞』などの専門紙まで、開架では約50紙が閲覧できるようになっています。
過去の新聞は、マイクロフィルムや縮刷版で利用できます。中には、自分の誕生日の新聞を探してコピーして帰る方もいらっしゃいます。マイクロフィルムリーダーの使い方は最初に職員が説明します。どなたでも簡単にお使いになれますので挑戦してみてください。
★図書館員のおすすめタイトル ―雑誌・新聞―
・『CDジャーナル』音楽出版社
ポピュラーミュージックを中心に、ジャズやクラシック、ボブ・ディランから地下アイドルまでが同居する「日本で唯一の音楽総合情報誌」。おしゃれなパッケージ(手触りサラサラ)とは裏腹な、圧倒的な情報量。揺りかごから墓場まで、私たちの音楽ライフをサポートしてくれます。あ、映画やオーディオの情報もありますよ!(あさり)
・『milsil(ミルシル)』国立科学博物館
科学のふしぎを興味深く、分かりやすく、毎号特集して伝えてくれる隔月発行の情報誌。最先端の発見から身近なおもしろニュースまで楽しめマス。親子で遊べる実験のページもあり。1号(2008年)からのバックナンバーも当館で所蔵! 書店ではなかなか見かけない本ですよ。(さとう)
・『Coffee Break』全国コーヒー協会
コーヒーを飲みながらまったり読書…至福のときですよね。そんな読書のお供に欠かせないコーヒーのあれこれ(歴史や文化、科学情報等)が詰まった『Coffee Break』。世界のあちこちのカフェも紹介されており、とっても素敵! 読むといつの間にやらコーヒー通になっているかも。(なか)
・『福島民報』福島民報社などの地方紙
福島県出身です。もの心ついた時から『福島民報』を見て育ちました。新聞書架コーナーにはずら~っと様々な新聞が並んでいますが、やはり最初に手にとってしまうのはこの新聞です。そして読んでいるとなんだか安心します。あまり知られていないようですが、ここには東北6県+北海道+東京の地方紙があります。地元の情報、なつかしさ、安堵感をぜひ新聞で!(よしだ)
図書館 around the みやぎ
シリーズ第48回 松島勤労青少年ホーム図書室
松島勤労青少年ホーム(図書室) 館長 石川 祐吾(いしかわゆうご)
松島町勤労青少年ホーム図書室は、松島町の中心部である高城町商店街にあり、電車(仙石線) でも車でも来館できるアクセス環境も良い場所に立地しています。
当町の図書室は勤労青少年内に設置されています。以前は中央公民館内に図書室がありましたが、勤労青少年ホームをリニューアルした際に、場所を移動しました。元軽運動場であった部屋を改装し図書室としたため、天井も高く開放感がある施設となっています。
当町の図書室では、一般図書や子ども向けの図書を中心に購入し、児童図書の充実と親子で利用できる環境整備を図っています。春には「子ども読書の日ブックラリー」、夏にはキッズルームにて、「子どもの本移動展示会」、秋には「秋のブックラリー」を開催します。 また、幼稚園、保育所、児童館、小学校など計9箇所に移動文庫を設置し、子どもが本と触れ合い親しむ機会の提供を行っています。
蔵書数等においては近隣の図書館と比較しますと小規模なもとのなっていますが、地域に根ざした図書室運営を心がけています。リクエスト図書の受付や特殊コーナーにも工夫を凝らし、ご来館いただく方々の心地よい空間であれるよう心がけております。スタッフ一同皆さんのお越しをお待ちしております。
松島町勤労青少年ホーム図書室
蔵書冊数/43,413冊
開館時間/平 日 10:00から18:00
土日祝 10:00から16:00
●休館日/月曜日
住 所/〒981-0215 宮城県宮城郡松島町高城字町71
TEL 022-354-4036
FAX 022-354-4036
図書館員から読書のすすめ
『チョコレート・アンダーグラウンド』 (アレックス・シアラー [著] KYURYUDO [刊])
「本日五時以降チョコレートを禁止する」
選挙に勝利し、政権を握った健全健康党が、国民の健康のためにと定めた「チョコレート禁止法」。甘いものはすべて口にしてはいけないし、口に出してもいけない。そんな理不尽で残酷な健全健康党に少年達が立ち向かいます。手に汗を握る展開とスピードの中で、読み進めていくほどチョコレートをかじりたくなるような一冊です。
「チョコレートが無い世界なんて!」と、非現実的で少しおかしいテーマのファンタジーかと思いきや、「チョコレート」を「自由」などの言葉に置き換えると現実的に感じます。そもそも健全健康党が政権を握ることができたのは選挙に勝ったからなのですが、横暴な政党がなぜ選挙に勝てたのでしょうか……? それは無関心で無責任な国民による選挙が招いた結果です。選挙権が18歳に引き下げられた今だからこそ、考えていただきたいテーマだと思います。
アレックス・シアラーは、私が中学生の時に朝の読書用に購入した初めての本の著者でした。イギリスの作家で、著作はそれぞれ題材も内容も違い、いろんな世界を味わうことができます。ファンタジーやSFかと思っているとリアリティがあったり、コミカルかと思っていると恐怖を感じたり、でも最後には必ず元気や勇気、気付きをもらうことができる作品ばかりです。『チョコレート・アンダーグラウンド』も、そんなシアラーらしさが溢れています。「私の一冊」というテーマで考えた時、たくさん悩みましたが、自分に読書の楽しさを教えてくれたアレックス・シアラーの本から選びたいと考えました。子どもの頃に読んだ本は、いつまでも心に残るのだなあとあらためて実感しました。
正解か不正解かしっかり向き合って自分の答えを出すこと、大事なものを守ろうとする勇気を持つこと、人とのつながりや時間を大切にすることなど、当たり前のようで忘れてしまいがちなことを気付かせてくれます。そんなアレックス・シアラーの世界観をみなさんにも味わっていただきたいです。チョコレートと一緒にぜひどうぞ。
(資料奉仕部 児童・視聴覚班 山本優衣)
図書館からのお知らせ INFORMATION
上映会特別企画 ミュージカル作家 梶賀千鶴子氏講演会を開催します。
宮城県図書館では、好評いただいた8月の開催に引き続き、SCSミュージカル研究所主宰・梶賀千鶴子氏をお招きし、講演会を開催します。
演出や振付等において数多くの劇団四季内の舞台制作に深く携わり、現在も宮城県仙台市を拠点にミュージカルの創作活動を続けている梶賀氏による、創作秘話やこれまで手がけた地域ミュージカルのお話などを聞くことができる貴重な機会です。ぜひご来場ください。
なお、講演会後には、梶賀氏が台本を執筆した劇団四季ミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』の上映会を開催します。
●開催日 平成28年11月26日(土)
【講演会】 12:00~13:00
会場:宮城県図書館2階 ホール養賢堂
※定員:120名(先着順・事前申し込みが必要です。)
【上映会】 13:30~15:30
会場:宮城県図書館2階 ミニシアター青柳館、ホール養賢堂
※事前申し込みは不要です。
詳しくは、宮城県図書館ホームページ(http://www.library.pref.miyagi.jp/)(10月中旬から記事掲載予定)をご覧ください。
「ことばのうみ」に広告を載せませんか?
「ことばのうみ」では、広告を募集しています。「ことばのうみ」は、宮城県図書館の各カウンターや展示室等の他、県内の学校や県庁、県美術館、東北歴史博物館、自然の家等で8000部配布しています。
宮城県図書館ホームページにもPDF版を掲載しており、来館者に限らず、県外を含む多くの利用者に楽しまれています。掲載の基準や広告料についての詳細は、宮城県図書館までお問い合わせください。
●問い合わせ先:電話:022-377-8444 FAX:022-377-8484
E-mail kikaku@library.pref.miyagi.jp
宮城県庁広告募集ページ http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/gyokei/koukoku-baitai.html
《叡智の杜》レポート 「東北のジュリエットへのラブレター」を開催しました。
平成28年7月31日(日)、シェイクスピア・カンパニー主宰・下館和巳氏をお招きして、講演会「東北のジュリエットへのラブレター」を開催しました。
シェイクスピア・カンパニーは、シェイクスピアの劇を東北弁に翻訳し、さらに舞台も東北に移すという、シェイクスピア劇に新たな息吹を吹き込む活動をされている団体です。宮城県を中心に全国各地、遠くはスコットランド・エディンバラでも上演されています。また、5年前の東日本大震災の後は、被災地を巡り公演を続けておられます。
講演会の前半は、400年前から続くシェイクスピアの言葉の魅力や、下館氏がどのようにシェイクスピア劇に出会い、シェイクスピア・カンパニーを立ち上げるに至ったのか、20年にわたるカンパニーの活動について語っていただきました。震災のあと、カンパニーをやめようと思っていた下館氏に向けられた、一人のおばあさんの「やめねでね」「んでも、長いのでねくてね、悲しいのもやめてね」という言葉で、短くて、誰も死なない、舞台を温泉旅館に移した新しいロミオとジュリエットが誕生したそうです。
休憩を挟んだ後半には、シェイクスピア・カンパニーによる脚本「新・ロミオとジュリエット」の一場面を読むワークショップが行われました。3組のロミオとジュリエットによる、バルコニーでの名シーンが再現されました。
時には冗談も交えながらのお話に、会場のいたるところで笑いが沸き起こり、笑顔のこぼれる楽しい講演会となりました。
この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第55号 2016年9月発行。