宮城県図書館だより「ことばのうみ」第31号 2009年8月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 巻頭エッセイ『思いで一冊の本』宮城県図書館長 佐藤 明男。
  2. 特集 みやぎ資料室へようこそ。
  3. 県図トピックス。 
  4. 図書館員から読書のすすめ。
  5. 図書館 around the みやぎ シリーズ第26回 仙台市泉図書館。
  6. 叡智の杜レポート。
  7. 図書館からのお知らせ。

巻頭エッセイ『思いで一冊の本』宮城県図書館長 佐藤 明男。

 テレビもラジオもない貧しい家が村の六、七割もあって、わが家もその中の一つであった。体が弱く学校の勉強も嫌いだったが、なぜか本を読むことだけは好きで、ほっとする居心地のよい場所を見つけたようなものである。
 小学四年の担任で図書クラブの顧問をしていた先生が、一年前倒しで認めてやるから図書クラブに入ったらと配慮してくれた。図書室の本の貸付、破れたものの補修、新刊本のラベル貼り、誰よりも先に読めることに夢中でずる休みもなくなり親も喜んでいた。
 五歳年上の中学生の兄が、その年の夏休みに有島武郎作の「或る女」という本を借りてきたので、兄が不在のときこっそり読み始め二日で読み終えたのだが、小説の意味がわからない。どうして女が男を捨てて他の男に走るのか。そのわけを誰かに聞くこともできず、中学に行ったら図書クラブに入って真っ先にあの本をもう一度読んでみようと決めた。四年後に再び貪るように読んでみると、世間の常識や慣習を無視した自由奔放な女の生き方に驚き、思わず憧れの一人になってしまった。

著者のご紹介。

さとう・あきお。宮城県図書館長。1946年宮城県生まれ。1969年山形大学文理学部卒業後宮城県庁に入庁。東北自治研修所講師、宮城県公務研修所教授、財団法人宮城県建築住宅センター理事長を経て、平成21年4月より現職。著書に『地方分権事始め』『新たな地方法人課税の実現に向けて』など。また、千城央(ちぎ・ひさし)の筆名で『ゆりかごのヤマト王朝』(本の森)を執筆。

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特集 みやぎ資料室へようこそ。

 

宮城県図書館では、宮城県に関する歴史や文化、産業、文学など、多様なテーマの郷土資料(宮城資料)を積極的に収集し、みなさまにご利用いただくと同時に、資料を保存し、後世にしっかりと伝えていくことを重要な役割のひとつと考えています。今回の特集では、こうした郷土資料を所蔵している「みやぎ資料室」をご紹介します。

宮城資料とは。

宮城県図書館では、宮城県を理解する手がかりとなる郷土資料を「宮城資料」と呼んでいます。具体的には以下のような資料を指します。
(1)宮城県及び本県に関係の深い地域を主題とした資料
(2)宮城県出身・在住の人物及び団体の著作
(3)旧仙台領(近世以前)出身またはゆかりのある人物の著作
(4)その他宮城県に関係の深い人物及び団体の著作
(5)宮城県にゆかりのある人物の業績・著作などに関連した資料
宮城資料のうち次の資料は、各担当で所蔵しています。
 新聞や県内大学の研究紀要等は3階 新聞・雑誌室。
 中学生以下を対象とした資料は2階 子ども図書室。
 CD・ビデオ・DVD 等の視聴覚資料は1階 音と映像のフロア。

資料の収集。

 宮城資料には、県内の自治体が発行した行政資料、研究機関の報告書や各種団体・個人による出版物など、通常の流通ルートに乗らない出版物が数多く存在します。これらの出版情報も収集し、網羅的に収集できるようつとめています。本や資料を発行した際にはぜひご連絡ください。
 また、宮城資料は原則として3 部収集しています。これは、館内での閲覧用・市町村図書館等への貸出用・保存用としているためです。

資料の保存。

宮城資料は一般的に発行部数が少ないため,発行後しばらくすると入手が困難になるものが多く,また本館だけが所蔵している資料も多数あります。貴重な資料を永く次代に残すことも本館の役割です。上記の理由から,宮城資料は館内でご利用いただくこととしておりますのでご理解とご協力をお願いいたします。

貴重資料の保存・利用。

 みやぎ資料室では、約5 万7 千点に及ぶ古典籍・貴重書を所蔵しており、中には『坤輿万国全図』のように国の重要文化財に指定されている資料もあります。こうした貴重書は、温度・湿度を一定に保った貴重書庫で大切に保管されています。
 古典籍の利用は、原則としてマイクロフィルム、複製本など代替資料となっています。すべてに代替資料があるわけではありませんので、ご利用の際は事前にお問い合わせください。

「郷土関係論文目録検索システム」をご活用ください。

本館では、平成19 年3 月から「宮城県内公共図書館所蔵郷土関係論文目録検索システム」を本館ホームページ上で公開しています。このシステムは、本館及び県内公共図書館が所蔵する資料に含まれる、宮城県に関する記事・論文約2万件をデータベース化することにより、検索を容易にしたものです。例えば、「キーワード」欄に「岩手・宮城内陸地震」と入力して検索すると、地震の発生から、1 年後の現在に至るまでのさまざまな記事が、どの資料に収録されているかを知ることができます。

宮城資料のいろいろ。

県史・市町村史誌。

県内の歴史について調べる際に、基本的な手がかりとなるのが県史・各市町村史誌です。『桃生郡誌』など、平成の大合併以前の資料も含め、明治期から現在までに刊行された県史・市町村史誌を網羅的に収集しています。


地形図。

国土地理院発行の5万分の1、2万5千分の1地形図については、宮城県域分は最新のものをすべて所蔵しています。また、過去に発行された地形図も所蔵していますので、現在の地形図と比較することも可能です。


みやぎゆかりの人の著作。

恩田陸、宮藤官九郎など、現在活躍中の宮城県出身の人物の著作のほか、伊坂幸太郎など宮城県在住作家の作品なども収集しています。また、宮城県は数多くの芸術家を輩出している県として知られていますが、石ノ森章太郎(漫画家)や平間至(フォトグラファー)の著作も所蔵しています。

 

宮城資料に関するお問い合わせは宮城県図書館3階みやぎ資料室までどうぞ。
電話 022−377−8483 FAX 022−377−8494。

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県図トピックス。一部の県民の間で使われる“宮城県図書館”の略称「県図」。県図の話題をご紹介します。

資料との新たな出会い —テーマ展示に注目!—。

現在、本館の各フロアでは、季節やその時の話題にあわせてテーマ展示のコーナーを設置しています。ふだんは分類に従って書架のあちこちに並んでいる資料を1か所に集めて展示することにより、利用される方が新たな資料に出会っていただけることを期待しています。展示している資料はいずれも貸出が可能です。展示は定期的にリニューアルしていますので、ときどきのぞいて見てください。この他にも、本誌下欄でご紹介している図書館職員が選んだ「私の1冊」(3階フロア)のコーナーもご好評をいただいています。あわせてご覧ください。

 

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図書館員から読書のすすめ 特別支援教育の本 利用サービス班 鈴鴨 秀一。

 私ごとですが、最近引越しをしました。自宅付近には特別支援学校があり、仕事の関係で平日に休むことが多い私は、子ども達の登下校の様子をよく目にします。
 学校現場での勤務が多かった私にとっては、何度となく児童生徒の笑顔に支えられながら仕事をしていたため、引越しをしてからの休日は心地良い気分を味わっておりました。
 ある日、荷物の整理をしていると1冊の本が目に飛び込んできました。それは『光とともに』という本で、2004年に放映されたドラマの原作になったものでした。
 物語はフィクションということでしたが、主人公の光くんが自閉症を抱えており、その成長過程をもとに家族や周囲の人々の交流が描かれていました。多くの自閉症児に関わる親御さん・教育・医療・福祉行政関係の方々に取材を重ねたとの記載がありましたが、まるで実話のような話で私はすぐにその本に引き込まれていきました。
 今回ご紹介する本は、特別支援教育・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・自閉症等に関するものです。ぜひ、ご覧ください。

 

こんな本を選びました。

『自治体から創る特別支援教育』
渡部昭男・新井英靖編 クリエイツかもがわ 2006 年

『ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら…』
安原昭博著 明石書店 2007 年

『ずっと「普通」になりたかった。』
グニラ・ガーランド著 ニキ リンコ訳 花風社 2000年

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図書館 around the みやぎ シリーズ第26回 仙台市泉図書館 館長  畠山 久。

 泉図書館は、平成2年7月に開館し、交通の便が良いこと等から、市立図書館7館の中で、利用者数、貸出数ともにトップで、年間の総貸出数は100万点前後を維持し、多くの市民に利用されております。平成20年11月から改修工事を行い、平成21年3月に子ども図書室を新設しました。その他の特色としては、泉区内に9か所(加茂、根白石、南光台、高森、松陵、寺岡、将監、黒松、長命ヶ丘)の泉図書館分室を運営しています。
 泉図書館1階は、一般書・視聴覚資料を配置し、ビジネス支援や中高生を対象としたコーナー等も設置し、土曜日・日曜日だけでなく、平日も多くの市民にご利用をいただいておりますので、閲覧席を124 席に増やしました。
 2階は、子どもたちに読書の喜びと大切さを伝え、身近に読書が楽しめるように、子ども図書室を新設しました。土曜日、日曜日は利用者が多い状況ですが、平日は、利用者が少なめですので、親子でゆっくりご利用いただけると思います。また、毎週水曜日にはおはなし会も開催しておりますので、ご来館をお待ちしております。
 今後とも、限られた予算、人員の中で、費用対効果等も勘案して、図書館の一番の基本である、より多くの市民にご利用いただけるように、本当に役立つ図書館サービスの向上を目指して、職員一同、努力して参ります。

仙台市泉図書館のご紹介。

図書館のデータ。

蔵書冊数 514,252冊(平成19年度末)

貸出冊数 1,032,574冊(平成19年度実績)

開館時間 午前10時から午後7時まで(火〜金) 午前10時から午後5時まで(土・日・祝)

休館日 毎週月曜日、祝日の翌日、1月〜11月の第4木曜日、年末年始、特別整理期間。

交通 仙台市営地下鉄「泉中央駅」下車徒歩5分。

住所 〒981-3133 仙台市泉区泉中央1丁目8−6。

電話 022-375-6161 FAX  022-375-6165。

ホームページ http://lib-www.smt.city.sendai.jp/index.html(仙台市図書館)

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叡智の杜レポート。移動特別展「きらめく叡智と美のしずく展」を開催しました。

 平成21年3月18・19日の両日、県庁2階講堂で「移動特別展『きらめく叡智と美のしずく展−未来へ伝えるみやぎの文化財−』」を開催しました。これは宮城県図書館が平成10年3月に現在地の泉区紫山に移転開館してから10 年が経ったことを記念して行ったものです。
 移転開館後、本館では、伊達文庫等の貴重な郷土の歴史資料を活用した「22世紀を牽引する叡智の杜づくり事業」を平成16年度から実施してきました。展示会では、平成20年度までの事業の成果として、『坤輿万国全図』『仙台領国絵図』などの古絵地図、『禽譜』『魚蟲譜』などの博物学資料をはじめとした国や宮城県の指定を受けた文化財レプリカを多数展示したほか、事業のあゆみについても広く県民の皆さまに公開し、本館への理解を深めていただきました。
 また、展示に先だって、「ふるさとみやぎに息づく日本のこころ」と題して、本館館長による特別記念講座を3回にわたって開催しました。

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図書館からのお知らせ。

館長講座「ヤマトの進出とエミシの抵抗からみたみちのくの歴史再発見」を開催します

宮城県図書館 館長 佐藤明男が講師を務め、全3回の講座を行います。事前申込は不要です。皆様のご参加をお待ちしています。
開催日は第1回 7月25日(土曜日)、第2回 8月29日(土曜日)、第3回 9月26日(土曜日)です。
時間は全3回とも午後1時30分から午後3時までです。
第1回の内容は「アテルイとは何者?」です。(終了しました)
第2回の内容は「モウレ(ウは半角)とは何者?」です。
第3回の内容は「北方進出を急ぐヤマトの意図は何?」です。
場所は図書館2階 ホール養賢堂です。
事前申込不要です。当日、会場にお越しください。
お問い合わせは企画協力班(1階) 電話022−377−8443へどうぞ。

常設展「みやぎの貴重書レプリカ展」を開催中です。

 歴史ブームと言われますが、興味深いのは戦国時代だけではありません。江戸時代に入ってからの学問・文化の発展・成熟には目を見張るものがあります。今回は、江戸の始まり頃から、幕末の気配が漂う頃までに作成された資料のレプリカを展示しています。
 まず見て楽しんでいただき、作成された背景や学問的な価値を知って、江戸時代と郷土宮城県に思いをはせていただければと思います。

期間は平成21 年10月31日(土)まで(図書館開館日の午前9時30分から午後5時まで)。
時間は図書館開館日の午前9 時30分から午後5時まで。
場所は図書館2階 展示室です。
問い合わせは企画協力班(1階)電話022−377−8444へどうぞ。

この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第31号 2009年8月発行。

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

TEL:022-377-8441(代表) 

FAX:022-377-8484

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