宮城県図書館だより「ことばのうみ」第58号 2017年9月発行 テキスト版
おもな記事。
巻頭エッセイ 『図書館は歴史の宝庫』 奥州・仙台おもてなし集団 伊達武将隊 伊達政宗。
わしは「永遠に繁栄する都」を夢見て仙台の街を築いた。現代においては「伊達の文化と歴史、観光の魅力」を伝えるための戦をしておる。故に歴史資料をあらためて読み深めることが多い。我らにとって、歴史を知ることはおもてなしの第一歩である。
宮城県図書館にたびたび足を運んでおる。図書館の静謐な雰囲気のなかで小説を読むのが好きでな。
現代に蘇ってから初めて読んだのは、山岡荘八著の「伊達政宗」。歴史の事実はさておいて、読めば読むほどに惹きこまれる。「人取橋の戦い」に「小田原参陣」、「関ヶ原の合戦」を経ての「仙台開府」…当時、わしが感じた想いを今に伝えてくれておる。なるほど、現世の者たちが戦国武将に憧れるわけもわかる気がいたす。
過去に想いを馳せ、大事に思ってくれる人々がいるからこそ、我らは現代に蘇る事ができたわけじゃ。
小説の中に「自灯明・法灯明」という言葉が出てくる。意味は是非とも自分で調べてもらいたいが、わしにとって読書は灯明。想像力を養い、ページを一つめくる毎にわしの世界を広げてくれるものじゃ。
歴史は地域の宝。なればこそ、政宗生誕450年のこの年に己が存在する事を特別に感じる。企画展の「伊達文庫―仙台藩 叡智の礎―」の開催と共に、我らも伊達の歴史の浪漫を届けて参らん。
〈特集〉仙台藩の国絵図
平成29年3月10日、文化審議会の答申により、本館所蔵「 陸奥国仙台領元禄国絵図関係資料(むつのくにせんだいりょうげんろくくにえずかんけいしりょう)」265点が、国の重要文化財に指定されることになりました。
元禄国絵図事業に関連する絵図類や文書・記録類が、質量ともに豊富に伝来する稀有な事例として重要であり、学術価値が高いと評価を受けました。
今回の特集では、指定資料の中心となる『仙台領国絵図(せんだいりょうくにえず)』をご紹介します。
■『仙台領国絵図』(元禄国絵図)
江戸幕府は支配領域に関する基本的な情報として、さまざまな絵図の作成を命じています。その代表的なものが「国絵図」です。幕府は国単位の地図である「国絵図」と、土地台帳となる「郷帳(ごうちょう)」の作成を諸国の大名に命じました。国絵図は幕府の定めた基準に従って作成され、幕府は提出された国絵図を集成して「日本総図」を完成させています。
江戸時代260余年の間、幕府の国絵図事業は、慶長、正保、元禄、天保年間の4回が主なものです。
宮城県図書館は『仙台領国絵図』(元禄国絵図)を4ほ舗所蔵しています。いずれも縦5m、横8mを超える大型絵図です。さらに「際絵図(きわえず)」「海際絵図(うみぎわえず)」などの国絵図関係絵図や、『 陸奥国仙台領郷帳(むつのくにせんだいりょうごうちょう)』『御国絵図記録(おくにえずきろく)』などの記録類、書状類からなる関係文書も所蔵しています。
『仙台領国絵図(せんだいりょうくにえず)』 元禄14年(1701) 516×841cm
たくさんの小判のような記号は「村形(むらがた)」で、幕府が定めた絵図基準に従って村名と石高が記され、郡ごとに色分けされています。石高郡集計の記載様式は、元禄国絵図のときにはじめて全国統一されました。絵図左下の目録には、献上年月は「元禄十二己卯年八月」とありますが、この絵図の裏書には「元禄拾四年九月」に江戸屋敷納戸に収納された控図を模写したと記録されています。
■「元禄国絵図」づくりのプロセス〈1〉―「際絵図」で境界を互いに確認
元禄10年(1697)、幕府は諸大名に国絵図と郷帳の提出を命じました。仙台藩は元禄12年(1699)に「陸奥国仙台領国絵図」を提出しましたが、国境筋(くにざかいすじ)を厳密に記載するようにとの幕府の命により、仕立て直しが行われました。「際絵図(きわえず)」は境界部分だけを描いたもので、絵図の形はさかいめすじ境目筋のとおりに切り抜いた「切型図(きりがたず)」になっているものもあります。双方の藩で作成した際絵図を互いに突き合わせて、境目筋を確認しました。
『仙台領際絵図 相馬領境(せんだいりょうきわえず そうまりょうさかい)』
元禄13年(1700) 80×140cm
この際絵図は、仙台藩から相馬藩へ宛てたものの写しです。末書に「奥州相馬御領分ヨリ仙台領分御境目(略)元禄十三辰年四月九日」とあり、双方の役人の署名があります。
本館は、陸奥国のうち相馬・福島・南部藩、出羽国のうち米沢・山形・新庄・秋田藩と取り交わした「際絵図(きわえず)」を収蔵しています。
■「元禄国絵図」づくりのプロセス〈2〉―『仙台領内道程絵図』に記された、江戸へ通じる陸路と海路
元禄15年(1702)、幕府より、各城下から江戸日本橋までのみちのり道程と一国内の各城下間の道程を書き上げるようにとの命令が下されました。この道程絵図(どうていえず)は仙台藩が独自に作成したものです。
『仙台領内道程絵図(せんだいりょうないどうていえず)』
元禄15年(1702)255×169cm
仙台領内の道筋を大道と小道に分けて朱色の太線と細線で引き分けています。すべての道筋には一里塚の記号が付してあります。絵図では一里塚の間隔はほぼ4~5cmで、本図の縮尺はおよそ1.5寸1里(97,200分の1)となっています。村々を図示することはなく、道筋の宿村だけが小判型の村形記号で図示されています。
■江戸時代―絵図の図法と絵師の業
江戸時代の地図の中には、「国絵図」「城下絵図」「要害屋敷絵図(ようがいやしきえず)」などのように、「絵図」と呼ばれ、地形や地名、集落、主な建物、利用方法などが彩色で絵画的に描かれたものがあります。
方位は、現代の地図では北を上にするのが一般的ですが、当時は特に統一されてはいませんでした。文字の記入方向もまちまちで、一つの絵図の中に四方向から文字が書かれている絵図も多くあります。これは、絵図は壁に掛けたり、机の上に置いて特定の方向から見るのではなく、畳の上に置いて四方から複数の人が見るということがあり、一つの方向にこだわらなかったためともいわれています。
絵図の作成を担当した「絵図方(えずかた)」は一定の基準を定めていて、図の内容が一目で理解しやすいようにしていました。川や湖、海などの水面は青色、山は緑色、田は黄緑色、畑は橙か茶色、国境は黒色が一般的で、道筋は川と区別するため赤が使われることが多かったようです。
日本は山の多い地形です。平面図に立体物である山を表現する場合、現代の地図では等高線を用いますが、絵図では山は見たままの立面に描写されました。
縮尺については、国絵図の縮尺は正保年間の基準で6寸1里(2万1,600分の1)と定められ、それ以後の江戸幕府国絵図の規格となりました。この縮尺は実際には道程の縮尺で、1里の距離を絵図面では6寸(約18cm)に表現して作成しました。今日の地図縮尺とは異なり、曲がりくねった山坂道などは図面では距離がのびすぎてしまうことから、一般には道筋1里を3~4寸程度に縮めて表現することもありました。
緻密に描かれた絵図には絵師たちの高い技量が現れており、さながら美術品のようです。
図書館 around the みやぎ
シリーズ第51回 大崎市図書館
司書 村上 さつき(むらかみ さつき)
平成29年7月20日。半年の休館を経て、大崎市図書館は新たな地でオープンしました。地元鳴子産の杉を多く使用し、心地よい木の香りが全体を包んでいます。移転をきっかけに図書館は2倍以上の広さになり、より郷土に親しみ、自分の住んでいる街の魅力に気づいてもらえることを目指して作った郷土資料コーナーも人気です。
また、地域がん診療連携拠点病院に指定されている大崎市民病院の協力のもと、がん情報コーナーも作りました。小さな書店では店頭においていないような医療本も多く所蔵しています。仕事での調べ物に役立つビジネスコーナーや、暮らしの法律や相続、料理や手芸をまとめたコーナーなどもあります。中高生が過ごしやすい空間のティーンズフロアもあります。困ったときに、「あ!図書館に行ってみよう」と思ってもらえる、そんな市民に寄り添った情報を提供できる場になればと思っています。
以前から子どもの利用が多かったこともあり、児童コーナーも充実させました。子どもが本を選ぶときに親御さんが見守りながら本を選べるように、子育て応援の本も近くに寄せています。今までは狭くてなかった、おはなし会ができるお部屋もつくり、お話の世界へより導きやすい環境になりました。
約800k㎡と広い大崎市に1館しかないことから、移動図書館も秋ごろを目途に運行することになりました。また、新たに、障がい者サービスも始められるよう、態勢を整えているところです。どんな方でも利用しやすい、そんな図書館を目指しています。
大崎市図書館
蔵書数/図書185,493冊
視聴覚 4,443点 雑誌 204誌
開館時間/平 日 9:30~19:00
土日祝 9:30~17:00
●休館日/毎週月曜日、毎月第3木曜日
(祝日の場合は翌平日)
年末年始、特別整理期間
住 所/大崎市古川駅前大通四丁目2-1
TEL:0229-22-0002 FAX:0229-24-2220
図書館員から読書のすすめ。
『自分の時間を取り戻そう』 ( ちきりん[著] ダイヤモンド社[刊] )
皆さんは「いつのまにか1カ月経っていた」「気が付いたら1年経っていた」というような感覚になったことはありませんか。過ぎてしまった時間を自分は一体何に使っていたのか、思い出そうとしてもよくわからない、覚えていない、ということはありませんか。ある意味時間の無駄遣いといえるそんな現象(?)の解決へのアドバイスをしてくれるのがこの本です。
著者のちきりんさんは、社会派ブロガーとして知られている方です。インターネット上のブログで現代社会に関する記事を掲載しています。
他の人が思いつかないようなアイデアを考える人です。誰もが無理だろうとか、それが当たり前だとか、考えてしまうことに対して「これは違う」「こうするべき」と力強く、説得力のある文章で、自分の意見や考え方をブログや著書で述べています。
この本についても同様に、説得力のある文章が載っています。
この本では、毎日忙しく過ごしてしまう要因として、時代の変化、個々人の考え方が挙げられています。
社会全体の生産性が全体的に上がってきていること、生産性を上げることに対する誤解・考え方、著者が考えるこれからの社会の動き等が記載されています。
そして、個人の時間の捉え方、個々人が必要としているものについての考え方について述べられ、本題である時間の取り戻し方=生産性の高め方について紹介されています。
日々変化していく社会の中で、自分は何を必要としていてどのように時間を使えば、必要としているものが手に入るのか。考えるきっかけになる本だと思います。
皆さんもぜひ、自分の時間の使い方を改めて考え、自分の時間を取り戻しましょう。
(資料奉仕部 逐次刊行資料担当 岩谷美穂)
図書館からのお知らせ INFORMATION。
■《叡智の杜》レポート 平成29年度夏休み図書館親子ツアーを開催しました。
8月4日(金)・5日(土)の2日間にわたり、「夏休み図書館親子ツアー」を実施しました。このツアーは、「宮城県図書館振興基本計画」における方針のひとつである「子どもの読書活動を支援する宮城県図書館」の取り組みとして、小学校低学年の子どもたちを対象に、図書館の新たな魅力を発見してもらおうと実施したものです。
今年度は定員を越える多くの応募をいただき、抽選の結果当選した親子にご参加いただきました。
ツアーの前半では、「ふだんは見ることのできない図書館のうらがわをたんけんしよう!」ということで、一般の方は入ることのできない「閉架書庫」といわれる図書館の裏側を中心に見学をしました。約20キロの重さがある「図書館で1番重い本」を実際に手に取って体験したり、電気で動く本棚や本のエレベーターを見学しました。
後半は、「職員役」と「利用者役」に分かれて、本の貸出業務の体験をしました。この体験では、貸出するためのコンピューターの使い方以外にも、貸出業務においては利用者のプライバシーの配慮などさまざまなことを考慮して行っていることを勉強しました。
参加した子どもたちからは「電気で動く本棚を見たのが楽しかった」「また貸出体験をしたいです」といった意見をいただきました。また、いっしょに参加した保護者の方からは「図書館の裏側にあんなにたくさんの本があることに驚いた」「バックヤードに入るという貴重な体験ができて嬉しかった」との感想が寄せられました。
■企画展「伊達文庫―仙台藩 叡智の礎―」開催中です
本館特別コレクションの「伊達文庫」は,仙台藩主・伊達家ゆかりの蔵書です。
今回の企画展では,このほど国の重要文化財に指定される「陸奥国仙台領元禄国絵図関係資料」や,宮城県指定有形文化財の,江戸時代最高にして最大とされる鳥類図鑑『禽譜』,仙台藩の天文学者・戸板保佑が編纂した和算の資料『関算四伝書』等の貴重な資料をご紹介しています。ぜひご覧ください。
●期 間 平成29年7月1日(土)から11月5日(日)まで
(図書館開館日の午前9時から午後5時まで)
●場 所 2階 展示室
●お問合せ みやぎ資料室 022-377-8483
●そ の 他 平成29年11月3日(金)から11月5日(日)まで、2階ホール養賢堂において、国指定重要文化財『仙台領国絵図』(元禄14)の原寸大レプリカを特別公開します。
■ビブリオバトル in 宮城県図書館 5th 参加者募集のお知らせ
宮城県図書館では、本や知識との新たな出会いを楽しむ場づくりを目指して、ビブリオバトルを開催します。ビブリオバトルとは、他の人にすすめたい本を紹介し合い、参加者全員が一番読みたくなった本に投票してチャンプ本を決める、知的書評合戦とも言われるイベントです。
●期 日 平成29年10月21日(土)
●時 間 午後1時30分から午後3時まで
●会 場 宮城県図書館1階 エントランス
●募集内容 (1)発表者(バトラー)6名まで ※高校生以上
(2)参加者(オーディエンス)30名まで
●申込方法 宮城県図書館HPの申込フォームからお申し込みいただくか、館内で配付している申込書をFAX・メール・郵送等で宮城県図書館までお送りください。※先着順につき、申込結果は記入頂いた連絡先へお知らせします。
●申込期限 平成29年10月7日(土)午後7時まで
※詳細は、宮城県図書館HP(http://www.library.pref.miyagi.jp/)をご覧ください。
この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第58号 2017年9月発行。