宮城県図書館だより「ことばのうみ」第57号 2017年6月発行 テキスト版
おもな記事。
巻頭エッセイ 『本から得られたもの-館長就任のご挨拶に代えて-』 宮城県図書館長 髙橋 総一郎。
この4月から宮城県図書館長を務めております。どうぞよろしくお願いいたします。
県民の皆様の「読みたい」、「見たい」、「知りたい」、「調べたい」に応えられるよう、職員一同努力して参ります。どうぞご来館ください。
本から得られたものと見出しを打ってしまいましたが、私からは、読書を通じて得られた片言隻句を活用した経験を紹介することで、ごあいさつに代えたいと思います。
仕事柄、職員向けの研修会などでお話をする機会があります。入庁(県職員になること)して1~2年の職員に仕事をする上での心構えを話した時のこと。講話の結びに、何か記憶に残る言葉を贈りたいと思い、宮澤賢治の「雨ニモマケズ」を引用して伝えました。冒頭の部分はあまりにも有名ですが、全文を聞いたことがある人はそれほどいないのでないかと思い、仕事に愚直に立ち向かうことの大切さを訴える言葉として選びました。ご賛同いただけるでしょうか。
またある時、職場の全体研修会でお話をすることがありました。仕事を進めていく上での使命感や達成感を全体で共有しようというような話を主にしましたが、他方で、苦しい時に自分を励ます言葉も贈りたいと考えました。趣味でジョギングをしていますが、それで興味を惹かれて読んだ本に、村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』があります。その中で著者が紹介している言葉、マラソンランナーは走っている最中にどんな言葉を頭の中で唱えているか、その一つが“Pain is inevitable. Suffering is optional.”です。意訳すると、痛みは避けることができないが、それを苦しいと思うかはその人次第、ということだそうです。聞いた人の心にどれだけ届いたか、定かではありませんが。
これからも、折に触れてそのような言葉を探していきたいと思っています。
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〈特集〉おいでよ!子ども図書室へ!
宮城県図書館振興基本計画の基本方針のひとつに、「子どもの読書活動を支援する宮城県図書館」があります。この方針に基づき、子どもたちに本や言葉に触れる機会や場を提供し、子どもの読書環境の充実を図るためにあるのが2階の子ども図書室です。
今回は、子ども図書室と、その取り組みについてご紹介します。
■子ども図書室について
Q.子ども図書室ってどこにあるの? どんな本があるの?
A.子ども図書室は、宮城県図書館の2階にあります。ここでは、0歳から中学生くらいまでの方が利用しやすい本を幅広く集めています。例えば、赤ちゃんが楽しめるような絵本や小学生が調べものをする際に役立つ本、岩波ジュニア新書のような易しめの新書などがあります。
また、児童資料について研究するための本など子ども図書室にあった方が利用しやすいと思われる大人向けの本もご用意しています。
Q.子ども図書室って何時から何時まで開いているの?
A.子ども図書室のご利用時間は、午前9時から午後5時までです。午後5時以降、全館が閉館する午後7時までに、予約された本の受け取りや、子ども図書室の本を利用したい場合は、1階音と映像のフロアカウンターまたは3階一般図書カウンターまでお越し下さい。ただし、日曜と祝日は全館5時で閉館します。
Q.子ども図書室には何冊ぐらい本があるの?
A.子ども図書室では、貸出用に約80、000冊の本や絵本、約1、400点の紙芝居をご用意しています(平成29年3月31日現在)。子ども図書室内に全て置ききれないので、書庫に入れている本もあります。どの本がどこにあるかは、検索した結果の画面に出てくる「場所」と「状態」を見るとわかります。
Q.子ども図書室の新しい情報を知るためには・・・?
A.新しく購入した本や、職員やよみきかせ団体の方が絵本の読み聞かせ等を行う「おはなし会」、子ども図書室で開催される催し物など、子ども図書室に関する情報を広報誌「子どもの森・本のいずみ」でお知らせしています。「子どもの森・本のいずみ」は、子ども図書室内で配布しているほか、宮城県図書館のホームページからもご覧いただけます。
(http://www.library.pref.miyagi.jp/child/izumi.html )
そのほか、毎月新しく購入した本の情報だけをピックアップした「号外 子どもの森・本のいずみ」もホームページ等でご覧いただけます。
■おはなし会と展示について
Q.おはなし会を聞いてみたいのだけれど…?
A.子ども図書室では、第一・第三木曜日、第一から第四までの金曜日、および第一・第三土曜日、毎週日曜日に、おはなし会を開いています。場所は、子ども図書室の中にある黄色い「おはなしコーナー」です。時間は約30分で、小さなお子さんから小学生まで、幅広い年齢の方に聞いていただけます。事前の予約は不要で、無料で参加することができます。詳しくは子ども図書室内で掲示している「おはなし会カレンダー」や広報誌「子どもの森・本のいずみ」、または宮城県図書館のホームページでご確認ください。
(http://www.library.pref.miyagi.jp/child/ohanashikai.html)
Q.季節にちなんだ絵本を知りたい!
A.子ども図書室では、毎月テーマを決めて絵本を紹介しています。季節や行事に関連して展示をしていますので、まずそちらをご覧になってみてはいかがでしょうか。展示の内容については、広報紙「子どもの森・本のいずみ」または宮城県図書館のホームページでご確認いただけます。
(http://www.library.pref.miyagi.jp/child/izumi.html)
ご希望の本が見つからない場合は、お気軽に職員へお声がけください。
■子どもの本展示会について
宮城県図書館では「子どもと本との出会い」に役立つことを目的として、毎年春に、前年に出版された児童書をまとめて展示しています。今年度は2016年に出版された本の中から約2、000冊を展示し、新しい本との出会いの場として、また選書の参考として、たくさんの方にご来場いただきました。会場では、一緒に絵本を楽しむ親子や、たくさんの本に囲まれて選ぶのを楽しむ子どもたち、児童書をじっくりと読み味わう大人の方々の姿が見られ、豊かな心をはぐくむ子どもの本との出会いを楽しんでいる様子がうかがえました。
また、子どもの本展示会終了後は約1年をかけて、県内の希望する市町村図書館や公民館図書室、小・中学校、特別支援学校に「子どもの本移動展示会」として巡回し、広く県内の皆様に児童書に触れる機会として、様々な場所で活用いただいています。これらの取り組みは、次世代を担う子どもたちへの読書環境の充実を目指しこれからも継続して開催していきます。
■学サポセットについて
宮城県図書館では、「学校図書館を支援する図書館・公民館図書室をサポートするセット」(略称:学サポセット)の貸出事業を行っています。この事業は、県内の市町村図書館・公民館図書室へのサポート及び子どもの読書環境推進支援を目的としたもので、平成24年度から始めました。百科事典から読み物にいたるまで、幅広い内容の本をテーマ別・対象学年別に組んだセット資料を市町村図書館等を通して県内の小中学校に貸し出すものです。
毎年セット内容を見直し、平成28年度より、貸出期間を60日間としたところです。ぜひご活用ください。
■児童資料研究・相談室について
当館では幅広く児童書を収集しています。これらの児童書を利用して調査・研究ができるよう、お申込みにより児童資料研究・相談室で閲覧することが可能です。
児童書の他に、児童文学に関する研究論集や事典、作家研究、読書案内、子どもの読書環境や読書推進に関する資料等も収集しています。これらについては、一部の本と雑誌以外は貸出も行っています。
新刊の児童書を選定する際の比較・検討や、大学等の研究室での児童書研究等にぜひご活用ください。詳しくは、宮城県図書館のホームページをご覧ください。
(http://www.library.pref.miyagi.jp/find-search/jidosiryoukenkyu-soudan.html)
図書館 around the みやぎ
シリーズ第50回 大和町公民館図書室
係長 荒木 直美(あらき なおみ)
大和町公民館図書室は、平成7年4月にオープンした大和町ふれあい文化創造センター(愛称:まほろばホール)の中にある面積124.5㎡ほどの小さな図書室です。窓からは町のシンボルである「七ツ森」が見えます。四季折々、違った景色で私たちの目を楽しませてくれます。
毎月第1土曜日と第3水曜日に、読み聞かせボランティアの方々によるおはなし会を開催しております。絵本や昔話などの読み聞かせのほかに手遊びなども取り入れて、大人も子どもも赤ちゃんも一緒に、楽しい一時をお過ごしいただいております。また、規模の大きな図書館では、話題の図書を借りるまでに何ケ月も待たなければならないこともあるかと思います。そんなときは、是非、当図書室にお出でください。場合によっては、それほどお待たせすることなく、貸出することができるかもしれません。それから、今年の3月より、宮城県図書館で借りた図書等を、地元の市町村図書館等へ返却できるサービスが試行されております。当図書室でも受付しておりますのでお気軽にご利用ください。
第1・第3火曜日と年末年始以外は、土日・祝日も開館しております。職員一同みなさまのお越しを心よりお待ちしております。
大和町公民館図書室
蔵書数/22,759冊(H28年度末)
利用時間/午前10時~午後6時
●休館日:第1・第3火曜日と年末年始
住 所/〒981-3626
宮城県黒川郡大和町
吉岡南二丁目4-14 TEL:022-344-4401
FAX:022-347-1501
図書館員から読書のすすめ。
『新世界ザル 上・下 アマゾンの熱帯雨林に野性の生きざまを追う』
伊沢紘生[著]東京大学出版会[刊]
1991年4月、大学の研究室を訪ねた私へ伊沢先生からかけられた言葉が忘れられない。「俺から話を聞くより、フィールドに来ないか?」
幼い頃から動物好きだったものの、現役の高校国語科教師として大学院に進学し、教科教育を専攻していた門外漢の私にとって、野生を見つめる最前線への扉が開かれた瞬間だった。
ニホンザルについて常識のように考えられていた“ボスザル”を中心とした社会構造を、伊沢先生は野生群の詳細な観察結果から否定した。餌付けという特殊な状況下で見られるサルたちの様子をもとに、人間が彼らを色眼鏡で見ていると痛烈に批判したのである。
「是非、この人に直接会って話を聞いてみたい。」という私の思いが、思いがけず自分自身を野生の世界へ向かわせることになった。それから10年以上にわたり、地元宮城県の金華山や仙台市西部地域をはじめ、青森県下北半島、石川県白山地域などでニホンザルの生態調査に参加させてもらった。これらの調査地はいずれも伊沢先生が開拓し、ニホンザルの長期継続観察が実現しているフィールドである。
また、南米アマゾン地域に生息する新世界ザルの研究者としても伊沢先生はパイオニア的存在であり、コロンビアのマカレナ国立公園内に調査基地を維持していた。その調査地訪問は、当時の私にとって大きな夢だったが、1997年12月と2000年7月の2回にわたって渡航が実現した。乾季と雨季の異なるシーズンに、それぞれ2週間にわたってキャンプに滞在し、原始の熱帯雨林で野生動植物の姿をたっぷり観察することができた。
だいぶ年月は経ってしまったが、著書を読むと伊沢先生に導かれたフィールドで、野生の一端に触れたときの感触がよみがえる。それとともに、全身全霊をかけて自然と対話する我が師の姿が、すべての著書から浮かび上がる。
皆さんも是非、本との出会いをきっかけに、“本物”の世界へアプローチしてみてください。そこでしか味わえない醍醐味が、きっとあるはずです。
(資料奉仕部 石川俊樹)
図書館からのお知らせ INFORMATION。
■本館資料が国の重要文化財指定へ
平成29年3月10日、文化審議会の答申により、本館所蔵「陸奥国仙台領元禄国絵図関係資料」265点が、国の重要文化財に指定されることになりました。
元禄国絵図事業に関連する絵図類や文書・記録類が、質・量ともに豊富に伝来する稀有な事例として重要であり、学術価値が高いと評価を受けました。
本館からは「坤輿万国全図」に続き、2件目の指定となります。
この指定にともない、4月28日(金)から4月30日(日)まで「仙台領国絵図」のレプリカ展示を行い、延べ245人にご来場いただきました。
■平成29年度みやぎ県民大学
「叡智の杜をたずねて ~伊達政宗公生誕450年記念講座~」受講者募集
今年度は仙台の英雄・伊達政宗公生誕450年にちなんで、“伊達”に関連した全4回の講座を行います。皆様のご参加をお待ちしています。
●日程・内容:
第1回 平成29年7月29日(土)「仙台領元禄国絵図の背景 -関係資料に見る幕府の国家戦略-」
第2回 平成29年8月26日(土)「仙台入部以前の伊達氏」
第3回 平成29年9月9日(土)「近代における伊達政宗」
第4回 平成29年9月30日(土)「政宗と仙台の国づくり」
●時 間:午前10時30分から午後12時(第1回・4回は開講式・閉 講式のため午後12時15分まで)
●会 場:図書館2階 ホール養賢堂
●定 員:50名(先着順・事前申し込みが必要です。)
詳しくは、宮城県図書館ホームページ
(http://www.library.pref.miyagi.jp/)をご覧ください。
■「サピエ」をご存知ですか?
視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」は、視覚障害者や文字の認識に障害のある方に対して、点字、デイジー録音図書データをはじめ、地域・生活情報などを提供しています。当館でも会員登録しサービスを始めました。
宮城県図書館では以下のサービスを行っています。
❶全国の点字図書館などの製作・所蔵・着手情報からご希望の図書を検索。オンラインで貸出依頼し利用者に当館を通じて貸し出しができます。
❷利用者が利用料無料の「個人会員」をご希望の場合、「サピエ」にサインナップするだけで、あとの手続きは当館が行います。ただし、手続きが代行できるのは、当館利用登録者に限ります。
上記サービスは、学習障害や識字障害などにより文字の認識に障害がある方も受けられます。
詳しくは、企画協力班 022-377-8444までお問い合せください。
この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第57号 2017年6月発行。