宮城県図書館だより「ことばのうみ」第44号 2013年7月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 巻頭エッセイ 「インピン野郎」 仙台市野草園名誉園長 管野邦夫 さん。
  2. 特集 新「宮城県図書館振興基本計画」。
  3. 叡智の杜レポート。 
  4. 図書館 around the みやぎ
  5. 図書館員から読書のすすめ。     
  6. 図書館からのお知らせ。

巻頭エッセイ 「インピン野郎」 仙台市野草園名誉園長 管野邦夫。

 このごろの図書館行きの一つに国語辞典の読み比べがある。手持ちは初版の広辞苑と大辞林ぐらいだからである。それというのも河 北新報読書欄に「『広辞苑』は信頼できるか」(講談社)の書評を東北大学の名誉教授の桂重俊先生は「歌会などで『辞書にはこう書 いてあります』と言う人に(私を含めて)少なくとも3冊の辞書を引く必要があることを教えられた」と書いておられたばかりで はない。インピン者のこだわりで、有名植物図鑑の「ハマナスはハマナシの東北訛りで誤称」 に憤慨しているからである。
 さて岩波の『広辞苑』はどうだろうか?版を重ねるたびに「ハマナシをハマナスとしてくださいませんか」を、インピン者の申し入 れなど聞くはずもなく、第6版も「ハマナスはハマナシの訛り」である。三省堂の『大辞林』 は「ハマナシはハマナスの別称」との解説。さて貴方はどちらに軍配を上げられますか?
 以前皇太子妃雅子さまのお印の花が「はまなす」と発表されるや、早速、「それはハ マナシの誤称」の見出しで会報を出した某化粧品会社…、これらはみな権威の請け売りと見るのはインピン者の偏見なるや? 

著者のご紹介。

管野邦夫(かんの・くにお)
1929年宮城県亘理町生まれ。宮城県農学校園芸学専攻科卒。
1950年より仙台市野草園造成に参加。園長を務めるなど野草園運営に従事し、90年 退職。現在名誉館長。
1972年モービル児童文化賞受賞。
主な著作に『草木と語る』(日本放送出版協 会)、『草と花の童話』(理論社)、『私の草木 賦』(日貿出版社)、『梟の花唄 せんだい四 季を遊ぶ』(河北新報出版センター)ほか。

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特集 新「宮城県図書館振興基本計画」。

 宮城県図書館は、県民の皆さんの資料や情報に対する要求に応え、課題の解決に資する図書館として、文化や教 育、産業の振興などに寄与することを大きな使命としています。では、そのような大きな使命を果たすためにはどのよ うな図書館を目指すべきなのでしょうか? また、地理的条件などのため、県図書館を利用できず、資料や情報にアクセ スすることのできない人もいます。そのような人にはどのようなサービスを行えるのでしょう?
 宮城県図書館では、平成24年度末に『宮城県図書館振興基本計画』を策定しました。これは、平成25年度から29 年度の5か年で本館がその使命や役割を果たすため、どのような図書館をめざし、どのような取組を行っていくか方向 性を示したものです。今号では、本計画の中より今後どのような取組を行っていくかご紹介します。

1 資料・情報を充実させる取組。

 宮城県図書館の果たすべき役割を着実に実行するためには、やはり、図書館には資料がある、という当たり前のことを着実に行う必要があります。出版 資料を購入するための予算確保に努め、特定の分野に偏ることなく公平かつ長期的な視点に立ち、必要な資料を幅広く収集し、地方出版にも目を向 け、非商業流通資料などを積極的に収集することも重要です。
 そして、収集した資料を整理、利活用してもらうため、図書館ならではの付加価値が増すような取組をしていきます。県民の皆さまが求める様々な要求 に応え、膨大な資料をより活用していくために、パスファインダー※やレファレンス事例集などを付加価値の高い情報発信を行います。
 これまで、図書館に蓄積されてきた郷土資料や貴重資料は、修復を施したり、電子化したりして、次世代へ伝えるために積極的に取り組んで行きます。 ※特定のテーマに関する文献・調査の方法を案内した手引き

 

2 図書館を使う人・支える人への取組。

 図書館は、社会教育機関でもあることから、図書館を使う人・支える人の支援や育成にも重点的に取り組みます。
 生涯学習を支える拠点として、ボランティア活動の場の提供や、様々な機関と連携して講座を開催したり事業を実施したりといった学習機会を提供していきます。
 一方、市町村の図書館を運営する側の職員を支えることも宮城県図書館の役割の一つです。市町村図書館などの職員向けに、必要性・有用性が高い研修を実施し、宮城県全体の図書館サービスの質の向上を目指します。 さらに、学校図書館や大学図書館などとも連携・協力をしていきます。
 市町村図書館などを定期的に巡回することにより、各館の課題に対して、適切な情報提供や解決への協力を行います。

3 サービス基盤を強化する取組。

 図書館の果たすべき役割を着実に実践していくために、限りある人的資源・物的資源を効率よく業務に配分し、人材育成やWeb サービスを充実するとい ったサービス基盤を強化する必要があります。職員育成の面では、司書をはじめとした職員全員が研修などにより、利用者の課題解決を支援できる知識や 専門性を備え、サービスの拡充・質の向上に努めます。
 資料の所在情報へのアクセスやデジタルアーカイブによる資料そのものへのアクセスをできる限り拡大し、一方で、全国的な協同データベースへの積極 的な参加といったWeb サービスの強化を行います。
 そして、近くに図書館がないといった地域的に来館が困難な利用者に対して、サービス手段を確保し、図書や情報へのアクセス機会を提供するよう具体 的な方策の検討を始めます。宮城県図書館から遠隔地に住む方が図書の貸出を受ける手段として、市町村図書館などを経由する協力貸出がありますが、引 き続き市町村図書館などと連携して行うとともに、障がい者や高齢者を含む来館困難者が利用できるサービスの幅を広げるようサービスポイントの拡充 に取り組みます。

4 震災復興への取組。

 震災から2年余が経過しました。県内の図書館もその被災の程度に大小はありますが、現在では概ね復旧しています。しかしながら、いまだ仮設での運 営を余儀なくされている図書館もあります。宮城県図書館は、こうした図書館の運営を最大限支援し、震災復興の一助となるよう努めていきます。
 また、図書館には、コミュニティの中核となり、読書による癒しやくつろぎの場を提供し、地域の情報拠点となり、経験を後世に伝えるアーカイブの機 能があります。被災地の子ども達のために活動している読書支援団体への協力などを通じ、震災からの復興に取り組みます。
 宮城県図書館の「東日本大震災文庫」は、震災に関する貴重な記録が失われる前に、県全域を対象として震災関係資料を収集することが求められてい ます。震災に関係した資料を図書館として収集し、整理し、そして、永く保存していきます。資料はより広く利用されるよう、そして、よりよい環境で永く残 せるよう電子化し、デジタルアーカイブの構築を進めていきます。 


 宮城県図書館が、県民の皆さんに本当に役に立つ図書館となるために今後5年間で進めてゆく取組について、ご紹介しました。
 そのためにどのような活動を行っていくのか、具体的な活動内容に関しては『ことばのうみ』第46号でご紹介いたします。

新「宮城県図書館振興基本計画」のスタートにあたって。宮城県図書館長 大坪 富雄。

 本館では今後の運営方針となる新しい「宮城県図書館振興基本計画」を策定・公表し、この4 月から実現に向けた行動計画が始動しています。計画の内 容は別の紙面に掲載してあるのでここでの説明は省略しますが、次の4 つの主要な柱で構成されています。
 「県民の課題解決を支援する」、「県全域の図書館サービスを支える」、「子どもの読書活動を支援する」及び「郷土資料や震災資料を確実に未来へ伝える」です。
 私たちが住む現代社会は、大量の情報で満ち溢れており、現代人は洪水の如く押し寄せる情報量の中から自分に有用なものを絶 えず取捨選択しながら生きていかなければなりません。そのような中で誤りのない判断をしていくには自分自身の中に必要な知識や 情報を兼ね備えることが不可欠です。学校で得た知識だけでこの情報化社会を生きていくには十分ではなく、自らが様々な知識や 情報を求め、生涯にわたり自主的に学習していく必要があります。
 図書館には、過去から現代まであらゆる分野の資料が収集・保存・整理されており来館者が調べ物をする場合の支援として図書 館職員によるサポートシステムもあります。
 新計画では、市町村図書館や学校図書館などとの連携をより緊密にし、県内の全ての図書館が読書活動の支援を基本としつつ地 域や住民の課題解決に必要な資料や情報を提供する情報拠点施設として積極的に貢献できる図書館を目指しており、掲げた目標 をしっかりと見据えながら日々の仕事に取り組んで行きたいと考えています。

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叡智の杜レポート「第44回子どもの本展示会」を開催しました。

 平成25年4月26日(金)から5月8日(水)まで、「第44 回子どもの本展示会」を開催しました。本展示会は、4月 23日から5月12日までの「子どもの読書週間」に併せて毎年開催しているもので、図書館、学校、地域、家庭など、様々な場面での 「子どもと本との出会い」に役立つことを目的としています。 
 今回は、本館が所蔵している2012年に出版された児童書や絵本などのうち約1,800冊と、児童資料研究書、 2012年児童文学賞受賞作品、仙台・宮城デスティネーションキャンペーンにちなみ「みやぎを旅しよう!」として 宮城県にゆかりのある児童書などを展示しました。今年度より2階養賢堂から1階エントランスへと場所を移して 開催し、例年の3倍となる延べ2,269人に御来場いただきました。会場では、読み聞かせをする親子、絵本を夢中 で読みふける子どもたち、熱心に児童書に見入る大人の方の姿が見られ、それぞれに豊かな子どもの本の世界に 触れるひとときを楽しんでいる様子がうかがえました。
 なお、本展示会で展示した本は、「移動展示会」として6月から3月までの期間、県内の希望する図書館、公民館、小・中学校に巡回展示します。子どもたちだ けではなく、保護者の方や、子どもの読書を推進する立場の大人の方々には選書の参考として、普段児童書に接する機会のない方には豊かな児童書の世界 に触れる機会として、興味を持っていただければと思います。

図書館 around the みやぎ シリーズ第37回。 仙台市榴岡図書館館長 中里省一。

〜榴岡図書館は今年で30周年〜
 仙台市榴岡図書館は、宮城野通図書館(仙台市で2番目の図書館)として、昭和58年4月に開館し、平成2年4月に宮城野図書館の分館として、 名称を榴岡図書館と変更しました。平成24年度から指定管理者として丸善株式会社が管理運営しています。
 仙台駅東口から徒歩圏内の「パルシティ仙台」4階に位置し、開館当時、周辺には仙台駅西側のビル群とは対照的に古い町並みが各所に残っていま したが、現在は区画整理が進められビジネス街となり、当時の面影はありません。利用者の大部分は大人が占めていますが、子どもたちにもっと活用し てもらいたいと考えています。
 平成24年度は、子どもの利用促進を図るため、周辺の学校や児童館、保育所等を職員が訪問しての情報提供、宮城野区民まつりでの「青空おは なし会」、お正月に幼児から中学生を対象に本をセットにして福袋に入れたものを貸し出す「本の福袋」等を行いました。また、大人を対象とした事業とし て仙台駅東側にゆかりのある島崎藤村の作品を含めた「大人のための朗読会」、地元識者に講師をお願いした歴史講座等も行っています。
 仙台市立図書館の中では一番小さな図書館ですが、交通アクセスは一番便利な場所にある図書館です。お近くに来られた際にはぜひお立ち寄りください。

仙台市榴岡図書館の概要。

 蔵書冊数/児童書 約29,000冊 一般書 約37,000冊
 開館時間/午前10時〜午後7時(火〜金)/午前10時〜午後5時(土日)
 休館日/月曜日、祝日の翌日、1月〜11月の第4木曜日、年末年始、蔵書点検期間
 住 所/仙台市宮城野区榴岡4−1−8 パルシティ仙台4階
 電 話/022−295−0880

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図書館員から読書のすすめ。『あなたのために いのちを支えるスープ』 資料奉仕部資料情報班 橘川 志津。

 7年程前、祖父母が病の床に就きました。2人の健康を気遣い、両親が作っていたのが辰巳さんのスープです。離れて暮らす私の自宅にもクール 宅配便で届くそのスープからは両親の愛情と食材への感謝、そしていのちを慈しむ心が伝わってくるような気がします。
 食といのちとのかかわりを伝える辰巳さんの視点は日々の料理だけではなく、食材や、食材の生産者へも及びます。生産者と消費者が分離して から久しい社会では、多くの消費者は自身の利便性を追及し、生産者から離れがちとなっているのかもしれません。安価で豊富な食材を過剰に求め ることは、生産方法や食品の安全性の低下につながる可能性もあるのではないかと考えます。生産者が良質で、安全な食材を作り続けていくため には、消費者が生産者に思いをはせ、日々の食事で支えることも必要であり、そのことが食材をとおして私たちのいのちに還元されるのだと、こ の本を読み返すたびに思います。
 関連する本として、辰巳さんの他の著作のほか、農業や食事に関わりのある本をあわせて紹介します。子どもたちはもちろん、大人にとっても食 事は体と豊かな心を育むために大切なものだとあらためて考えさせられる、いわゆる食育の本。バイオマスエネルギーの普及、穀物価格の上昇、食 料自給率の低下など食料や飲料水に関する国際的な現状と国内の農業について知ることができる本。私たちの食習慣と、その影響について考える 本。読者に永く愛され、読んだ後に食べたくなる美味しそうな料理が登場する本や、食事に関する小説。テーマは異なりますが、いずれ も読んだ後に、食事のしかたが少し変わる本ではないかと思います。いのちを慈しむという辰巳さんの思いを感じていただけたら嬉しく思います。

[こんな本を選びました]

○辰巳芳子さん著作
「あなたのために」
辰巳芳子著(文化出版局)

「この国の食を守りたい」
辰巳芳子著(筑摩書房)

「娘につたえる私の味 新版」
辰巳浜子・辰巳芳子著(文藝春秋)


○いのちと食について
「いのちと食」
大久保満男編(中央公論新社)

「いのちと心のごはん学」
小泉武夫(NHK出版)

 

○食についての小説・エッセイ
「池波正太郎のそうざい料理帖」
池波正太郎著(平凡社)

「八朔の雪」
高田郁著(角川春樹事務所)

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図書館からのお知らせ。

東日本大震災関連の記録や資料をご寄贈ください。

 宮城県図書館では「東日本大震災」や復旧・復興に関する記録や資料を収集し、多くの皆さんにご利用いただけるように努めています。また永く後世 に引き継いで参ります。詳しくは館内に設置しております資料寄贈に関するチラシ、またはホームページをご覧ください。
 ●送付・問合せ先 : 宮城県図書館 震災文庫整備チーム
            〒981-3205 仙台市泉区紫山1-1-1
            TEL : 022-377-8498 FAX : 022-377-8492
            E-メール : librarysb@pref.miyagi.jp

『きらめく叡智と美のしずく』展。

 宮城県図書館の所蔵している坤輿万国全図(国指定重要文化財)、禽譜(県指定文化財)、魚蟲譜(県指定文化財)などの貴重資料を展示していま す。先人が育んできた郷土ゆかりの貴重資料を実際に見て楽しんでいただくとともに、現代に受け継がれる優れた文化をご覧ください。

○期 間 : 平成25年7月6日(土)〜10月25日(金)
○時 間 : 図書館開館日の午前9時から午後5時まで
○場 所 : 宮城県図書館2階展示室

宮城県公文書館移転のおしらせ。

 平成25年4月より宮城県図書館2階西側に宮城県公文書館が移転開館しました。公文書館は、歴史的・文化的に価値の高い過去の行政文書などを 収集・保存し、公開しております。皆様のご利用をお待ちしております。
 ●開館時間 : 午前9時から午後5時まで
 ●休館日 : 日曜日及び月曜日、国民の祝日(土曜日を除き、月曜日に当たる場合はその日後の直近の休日でない日)
  ※図書館の休館日と違いますのでご注意下さい。

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この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第44号 2013年7月発行。

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

TEL:022-377-8441(代表) 

FAX:022-377-8484

kikaku(at)library.pref.miyagi.jp ※(at)は半角記号の@に置き換えてください。