宮城県図書館だより「ことばのうみ」第38号 2011年12月発行 テキスト版
おもな記事。
- 巻頭エッセイ 『思い出の県図書館』 歌手 さとう宗幸さん。
- 特集 宮城県図書館創立130周年・青柳文庫開設180周年記念特別展「宮城県図書館130年のあゆみ−青柳文庫とその志を引き継いで−」。
- 図書館 around the みやぎ シリーズ32回 角田市図書館
- 叡智の杜レポート。
- 図書館からのお知らせ。
巻頭エッセイ 『思い出の県図書館』 歌手 さとう宗幸。
授業が終わり県庁の食堂で昼食を摂る、時にはその後深い木々に包まれた勾当台公園で友人たちと談笑。別れた後 に市電に乗って榴ヶ岡にある「県図書館」に・・・。在京大学を目指していた予備校時代の日課だった。その夏の内臓疾患が 元で上京を断念することになるが、果たしてその後の仙台での大学生活があったればこその今といえよう。
県図書館にいけば数多くの同予備校の女子生徒も来ており、何らかの接点でも得られれば・・・といった思惑が無かった わけでもなさそう、が結局はなんの恋物語も生まれやしなかったのである。こちらにはいささかよこしまな想いがあって も、相手になってくれるような空気は皆無。立場を考えればそりゃぁ当然のことで・・・。最近の事情はよく知りませんが、 当時図書館内で席を確保することは結構大変だったと記憶している。中には朝から晩までへばりついている常連の受験 生。話し声も殆ど聞こえないあの空気の張り詰めたようなスペース、もう記憶は殆ど失われてしまっているが懐かしき青春時代である。 45年も昔のことである。
パークタウンに住んで25年過ぎた。あの当時とは比べることも出来ないほどの威容を誇る現図書館。散歩がてらに訪ね られる私にとって、いずれ生活の大切なスポットとなりそうである。その時は一瞬の懐古を楽しもう。
(さとう宗幸 歌手)
著者のご紹介。
さとう宗幸〈本名:佐藤宗幸〉、岐阜県生まれ
昭和24年1月25日生。仙台市在住。
昭和53年「青葉城恋唄」でデビュー、130万枚のミリオンセラーを記録、新人賞を初め数々の賞を受賞する。
その後、TBS金曜ドラマ「2年B組仙八先生」やNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で支倉常長役として出演、又、関西テレビ系 ドラマ「裸の木」ではギャラクシー賞を受賞するなど数々のドラマや映画に役者としても出演する。
現在、地元テレビ局で月曜日〜金曜日の毎夕「OH!バンデス」のパーソナリティーを担当して今年で17年目を迎え、夕方の 顔として老若男女から人気を博している。
今年、デビューから33年を迎えテレビ・ラジオ・コンサートに出演中。
特集 宮城県図書館創立130周年・青柳文庫開設180周年記念特別展「宮城県図書館130年のあゆみ−青柳文庫とその志を引き継いで−」 展示期間:平成23年11月3日(木)〜平成24年1月25日。(水)
明治14年(1881)7月25日,当館は「宮城書籍館」として創立され,今年で創立130周年を迎えました。創立時の蔵書は, 仙台藩ゆかりの「青柳文庫」と「養賢堂文庫」がその礎となりました。
「青柳文庫」は,仙台藩出身の商人・青柳文蔵(1761−1839年)が蔵書と運営基金1千両を献上し,仙台藩に開設を願い出たものです。 藩は目付2人をおき公開文庫として運営にあたったことから,我が国の公共図書館のさきがけと評されています。
今号の特集では,現在開催中の特別展とともに当館展示室についてご紹介します。
特別展第1部 宮城県図書館130年のあゆみ。 展示室 正面展示コーナー
このコーナーでは,明治14年(1881)の「宮城書籍館」創立から,当館の130年のあゆみを年表と各時代における図書館サービスや資料, 人物等を取り上げて紹介しています。
明治時代では,本館第8代館長・大槻文彦(1847−1928年。国語学者,仙台藩出身)について紹介しています。明治25年(1892)6月から 同28年(1895)12月まで当館館長を務めました。大槻は日本初の近代的国語辞典『言海』(1889〜1891年)を出版しています。
また,「青柳文庫」について『仙台の人青柳文蔵,天保2年に,私費を以て,仙台に図書館を建てて(中略),衆庶に縦覧せしむ,是れ,我国公開図書館の 嚆矢なり。』(『図書館雑誌 第13号』明治44年(1911)11月)と論評しています。
特別展第2部 青柳文庫とその志を引き継いで。 展示室 西側展示コーナー
このコーナーでは,明治14年(1881),当館創立時の蔵書の礎となった「青柳文庫」を紹介しています。仙台藩出身の商人・青柳文蔵の旧蔵書で 『棠陰比事物語』(南宋・桂万栄編纂による裁判実話集)等,法律や医学関係の書物から『明月記』『西遊記』などの読み物まで幅広い蔵書構成となっています。
『六代治家記録 巻之八十』(写本)には,第十二代藩主・斉邦(龍山公)の治世,天保元年(1830)閏三月二十八日条に,青柳文蔵がその蔵書二八八〇部 余りと文庫運営の基金を仙台藩に献上し,十人扶持を賜ったことなどが記録されています。
明月記 第二冊
藤原定家著 写本(寛文二—延宝九) 三十冊 印記「青柳館文庫」「宮城師範学校蔵書」
藤原定家の日記で,題名は定家が住吉社参籠の際の霊告「汝月明らかなり」に基づくものという。源平の戦いから鎌倉幕府成立期の社会情勢や, 『新古今和歌集』の成立状況などが克明に記されており,当時を知る上での第一級の資料となっている。
伊勢参宮名所図絵 第二冊
蔀徳基(閏月)編・画 刊本 寛政九年 大阪 塩屋忠兵衛 五巻附録二巻 六冊 印記「青柳館文庫」「宮城師範学校蔵書」
各所図絵は,地名・名所・寺社などの沿革を説明した絵入りの通俗図誌で,近世後期に数多く刊行された。本書は伊勢を中心として参宮の旅程の名所・旧跡を 網羅した案内書(ガイドブック)兼伊勢地誌となっている。
特別展第3部 宮城県図書館所蔵・国指定重要文化財。 展示室 中央展示コーナー
−江戸時代,日本に伝わり複写されたマテオ・リッチの世界図−
『坤輿万国全図』は17世紀初め,イタリア人宣教師マテオ・リッチ(中国名/利瑪竇)が中国(北京)で刊行した木版刷りの漢訳世界地図です。
『坤輿万国全図』について,当館は中国で刊行された木版刷り(版本)と,日本で模写された写本(着色)の2点を所蔵しています。 平成2年(1990)に国の重要文化財に指定されました。
本特別展では『坤輿万国全図』(写本/着色)を公開しています。鎖国が続く時代,『坤輿万国全図』が伝来し,日本で模写された写本の所在は, 現在30点近くが明らかにされています。
常設展 本と人の文化史 東側展示コーナー。
このコーナーでは古代中国における文字の誕生から紙の発明,印刷のはじまりと各種資料を展示し,その起源を説明しています。また,中国の出版文化, 朝鮮の出版印刷文化について,それぞれ書物の複製や写真パネルを展示しています。その他にも紙のさまざまな利用方法について紹介し,活版印刷の模型で活字印刷の 体験をしていただくことも出来ます。
展示室ではこれまでさまざまな特別展を開催してきました。今年度開催した展示室についてご紹介いたします。
(1)平成23年1月15日(土)〜平成23年8月31日(水)「宮城に眠る玉手箱〜のぞいてみよう児童資料の世界〜」
この特別展ではちりめん本を中心に,当館所蔵の児童文芸誌,紙芝居などを展示しました。ちりめん本とは,クレープ状に細かく皺を寄せ,柔らかくしんなりとさせた 和紙で製本された和綴じ本です。開国間もない明治時代来日した外国人にとって,着物の生地のような素材感を持つちりめん本は,日本の昔話や風俗などを題材としていた 多色木版画刷りの絵入本とした,格好の土産となりました。日本文化が流行していたヨーロッパ本土でも,ちりめん本は人気をよび,数カ国語に訳され, 輸出や国際共同出版までされるようになりました。
(2)平成23年8月6日(土)〜平成23年8月31日(水)「宮城の魅力再発見」
「宮城に眠る玉手箱」と併設する形で開催しました。当館所蔵の近世の塩竈・松島の様子を描いた絵図や,松島を訪れたブルーノ・タウトの日記,仙台駄菓子に まつわる資料や白石和紙で編まれた本などを展示しました。
また,七夕の時期ということで,来館者に,書いてもらった短冊や,折ってもらった折り鶴を復興七夕とし,展示室内に飾りました。
(3)平成23年9月6日(火)〜平成23年9月30日(金)「三重の魅力」
三重県立図書館の協力を得て交流展示を開催しました。東日本大震災の発生以降,三重県立図書館は被災地の図書館への支援を実践されています。 今回,三重県立図書館からは三重県に関わる本,松阪牛や真珠などの「三重ブランド」のパネルをご提供いただきました。
(4)平成23年10月6日(木)〜平成23年10月27日(木)「『ことばのうみ』に集う−宮城県図書館だよりとみやぎゆかりの作家たち−」
平成10年3月に,当館はこの紫山の地に移転・開館しました。その記念として,宮城県図書館だより「ことばのうみ」を創刊し, 今年の8月に第37号を発行しました。
この特別展では,創刊号の高田宏氏から最新号のサンドウィッチマンのお二人まで,巻頭エッセイを執筆してくださった方々の著作を 展示し,みやぎゆかりの方々の多彩な活動をご紹介しました。
図書館 around the みやぎ シリーズ第32回 角田市図書館 館長 佐山 富夫。
角田市は約400年前の慶長年間に,仙台藩伊達家の家臣石川氏の城下町として繁栄の基礎が築かれました。角田市図書館はその学問所 「成教書院」の由緒深い場所に昭和46年に開館。現在,市民センターと併設する2階建,床面積920㎡,蔵書資料数13万7千点。さらに, 市内小学校への巡回貸出のための移動図書館車「かしの木号」及び放送大学角田視聴学習室の施設を擁して,その業務を非常勤も含めた12名の 職員で生涯学習のニーズに応える最良の市民サービスを目指しています。
本年度は40周年を迎え「子ども図書館」が7月1日に新しく開館しました。本館に隣接した別棟の木造平屋建,170㎡。 蔵書は絵本・紙芝居等6千点。木の優しいぬくもりの中で子どもたちが読書の喜びを存分に味わい,生涯にわたる読書意欲形成の基盤が養えるように 「賑わいとざわめきのある子ども図書館づくり」に配慮しています。これまでの「静けさ」という図書館マナーよりも, 子どもたちの知的出合いの喜びや,より深い感動を率直に表現できる「ざわめき」を優先させた子ども図書室にしたいと考えています。 さらに,幼児からお年寄り,親やボランティアの皆さんもまた絵本を介して交流する賑わいの中で,幼児期からの読書力育成の重要性を確認し, 実践していける拠点になれればと願っています。
角田市図書館のご紹介
蔵書冊数:136,908冊(平成22年度末)
貸出冊数:157,266冊(平成22年度末)
開館時間:10:00〜18:00(火〜金) 10:00〜17:00(土・日)
休館日:月曜日,国民の祝日(土日を除く),月末日,年末・年始(8日間),特別整理期間(10日間)
交 通:阿武隈急行線「角田駅」下車徒歩20分
住 所:〒981−1505 角田市角田字牛舘10
TEL:0224−63−2223 FAX :0224−63−5633
叡智の杜レポート。「利用者の皆様参加の防災訓練」を実施しました。
10月14日(金),当館で今年度3回目の防災訓練を実施しました。今回は大型地震を想定しての訓練で,今まで行ってきた訓練とは違い, 職員だけではなく利用者の皆様にも参加いただきました。ご参加いただいた方の中には,3月11日の東日本大震災当日も当館を利用していたという 方もおり,皆真剣に取り組んでおられました。
参加者の感想の中には「実際に非常階段を利用しての避難を体験することができ,今後図書館に来館したときに何があっても大丈夫という 安心感をもちました。とてもよい経験をさせていただきました。」「このような訓練は非常に大切かつ利用者にとっても有り難い事だとおもいます。」 といった意見がありました。その反面「警報アナウンスが出てから避難誘導までの対応が遅い。対応者はもう少し大きな声及び適切な動き等を見せてもらいたい。 少しリアリティさが足りない様な気がする。」「土曜,日曜など人の多い日にやらなければ避難における最も重要な一つの集団を誘導するという 訓練にならないのではないか。」といった意見もいただきました。当館ではご記入いただいた貴重な意見を真摯に受け止め,今後の参考にしていきたいと思います。 また,今回の訓練を活かし,今後も職員一同皆様の安全確保に努めて参りたいと思います。
最後にご参加いただいた皆様ご協力ありがとうございました。
図書館からのお知らせ。
「3.11 東日本大震災」関連の記録や資料をご寄贈ください。
宮城県図書館では「東日本大震災」の記録や関連資料の収集に努め,「東日本大震災文庫」を設けて,皆様の利用に供するとともに, 永く後世に引き継いでいきます。
○収集資料:「東日本大震災」に関する資料全般について収集しています。
例)記録集,写真集,録画等映像資料,調査報告書,避難所だより,壁新聞,文集,イベントの配布ちらし,ミニコミ誌,学校だより,祝辞・答辞など
○収集部数:可能であれば3部の寄贈をお願いします。(電子データは1部で可です。)
○寄贈方法:ご持参いただくか,右記送付先にお送り下さい。郵送の場合,送料はご負担いただきますようお願いいたします。 なお,ご寄贈の際は「東日本大震災関係資料送付書」(当館ホームページからダウンロード可)を記入し,資料と合わせて送付願います。
○留意点:ご寄贈資料の取扱いは,図書館にご一任頂きます。予めご了承願います。
○送付先:〒981−3205 宮城県仙台市泉区紫山1−1−1 宮城県図書館 みやぎ資料室
○問合せ先:TEL 022−377−8483 FAX 022−377−8494 E−メール:kyoudo@library.pref.miyagi.jp
特別整理期間のため休館します。
蔵書の所在や状態を点検するため,下記の期間休館します。利用者の皆様にはご不便をおかけしますが,ご理解とご協力をお願いします。
○期 間:平成24年1月26日(木)から2月1日(水)まで。
この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第38号 2011年12月発行。