宮城県図書館だより「ことばのうみ」第13号 2003年3月発行 テキスト版。

おもな記事。

  1. 表紙の写真とことば。
  2. 巻頭エッセイ 読書の時間 作家 恩田陸さん。
  3. 特集 図書館サービスQ&A。
  4. 図書館 around the みやぎ 志津川町図書館。
  5. 貴重書の世界 「生計纂要」。
  6. わたしのこの一冊 わかやまけん・さく「おっぱい おっぱい」。
  7. 図書館からのお知らせ 本館所蔵資料の文化財指定について。

表紙の写真。

 宮城県図書館の北側に広がる遊歩道の風景です。光の春を感じる風景を写真でご紹介しています。

表紙のことば。

「春風も外山のおくも雪消えてのどけき空に帰る雁がね」 伊達政宗。
 雪解け水が大地を潤し、森羅万象躍動する季節を迎えました。紫山の草木も一斉に萌え、小鳥たちの恋のささやきが聞こえる季節です。身近な山野を訪れ、しばし大自然の一員としてあるがままの自分を取り戻す、そんな一時を過ごされてはいかがでしょうか。

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巻頭エッセイ 「読書の時間」 作家 恩田陸さん。

 読書とは、突き詰めていくと、孤独の喜びだと思う。人は誰しも孤独だし、人は独りでは生きていけない。矛盾しているけれど、どちらも本当である。書物というのは、この矛盾がそのまま形になったメディアだと思う。読書という行為は孤独を強いるけれども、独りではなしえない。本を開いた瞬間から、そこには送り手と受け手がいて、最後のページまで双方の共同作業が続いていくからである。本は与えられても、読書は与えられない。読書は限りなく能動的で、創造的な作業だからだ。自分で本を選び、ページを開き、文字を追って頭の中に世界を構築し、その世界に対する評価を自分で決めなければならない。それは、群れることに慣れた頭には少々つらい。しかし、読書が素晴らしいのはそこから先だ。独りで本と向き合い、自分が何者か考え始めた時から、読者は世界と繋がることができる。孤独であるということは、誰とでも出会えるということなのだ。

著者のご紹介。

おんだ・りく。作家。1964年宮城県生まれ。東京都在住。早稲田大学教育学部卒業。1991年第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となった『六番目の小夜子』でデビュー。近刊に、『ねじの回転』『蛇行する川のほとり』などがある。

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特集 図書館サービスQ&A。

 宮城県図書館が紫山に移転オープンしてから、この3月で5年を迎えました。その間、県民の皆さんにご利用いただける図書館をめざして、蔵書の充実や機能の拡大、サービス内容の充実に向けて様々な取り組みをしてきました。
 そこで、今回は、これまでお問い合わせが多いもの、また、皆さんに是非知っていただきたいサービス内容について、Q&A形式で特集します。

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その1 借りる。

問い。 利用カードを作りたいのですが、どうすればよいですか?
答え。 登録できるのは、県内に在住・在勤・在学されている方です。利用カード申込書に必要事項をご記入の上、住所・氏名の確認できるものと一緒に登録カウンターにお出しください。

問い。 住所・氏名の確認できるものとはどのようなものですか?
答え。 運転免許証や保険証、学生証、生徒手帳、学校の名札、ご本人様宛の郵便物などです。詳しくは図書館までお問い合わせください。

問い。 利用カードはどこで作れますか?
答え。 3階の一般図書登録カウンター、みやぎ資料室カウンター、2階の子ども図書室です。ご本人様が来館の上、手続きをお願いします。身体の障害等の理由で来館できない場合は、お電話でご相談ください。このあとの「こんなことも」のQ&Aもご覧ください。

問い。 今日借りたい本があるのですが、借りられますか?
答え。 利用カードは登録後すぐに利用できます。貸し出しカウンターにお借りになりたい本と一緒に提示してください。

問い。 返すときはどうしたらよいですか?
答え。 返却カウンターまでお返しください。図書館が閉まっているときは正面玄関にブックポストがありますのでそちらへ入れてください。視聴覚資料や紙芝居についてはカウンターへ直接お返しください。

問い。 読みきれない時はどうしたらよいですか?
答え。 返却期限日までに、返却カウンターにお持ちください。予約でお待ちの方がいなければ改めて15日間お借りいただけます。

問い。 忙しくて図書館に行くことができません。家族に頼むことはできますか?
答え。 できます。ご家族に利用カードを託してください。ただし、資料のご予約については、お読みになるご本人でお願いします。

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その2 調べる・探す。

問い。 読みたい本があるのですがどうしたらよいですか?
答え。 館内には、蔵書検索用のコンピュータが設置されています。また、ご家庭や職場でインターネットが使用できる場合は、図書館の蔵書を検索することもできます。分からない場合や探せない場合は、遠慮なく調査相談カウンターにご相談ください。
 貸し出し中のものは、ご予約いただくと、本が返却され次第ご連絡を差し上げます。
 県図書館で所蔵していない資料は、購入するか、県内の所蔵館からの取り寄せ、または、所蔵館のご紹介などを行っています。資料が準備できましたらご連絡を差し上げます。
 県図書館で所蔵していない資料で、宮城県外の図書館に所蔵されている資料についても借り受けしてご連絡を差し上げます。その際は送料を切手でご負担いただきます。県外図書館からの借り受けについては、ご来館の上、調査相談カウンターへお申し込みください。

問い。 以前に発行された雑誌の記事を手に入れたいのですが?
答え。 お探しの雑誌が県図書館に所蔵されていれば、それをご利用いただけます。著作権法の許す範囲でコピーもできます。
 お探しの雑誌が県図書館に所蔵されていない場合は、他の図書館から取り寄せることもできます。ただし、雑誌は現物を貸し出しするところが少ないのでコピーでの取り寄せになることがほとんどです。コピーの取り寄せには、コピー代金のほか、送料や振込手数料が必要になります。また、届くまで1〜2週間くらいかかります。

問い。 最近の新聞記事を探していますが?
答え。 県図書館では、「河北新報(1991年8月〜)」「朝日新聞(1984年8月〜)」のデータベースを検索することができます。また、CD−ROMを使って検索できる新聞もあります。詳しくは3階新聞・雑誌カウンターでご相談ください。なお、検索結果を印刷することもできますが、用紙(A4サイズ)はお持ちいただきますようお願いします。

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その3 こんなことも。

問い。 県図書館から本を借りたいのですが、遠くてなかなか行けません・・・。
答え。 県図書館の資料は、お住まいの市や町の図書館で借りることもできます。各地域の図書館へ寄せられる皆さん一人一人からの本に対するリクエストに、それぞれの図書館がきめ細かくお応えすることができるよう、仕組みを整備しています。詳しくはお近くの図書館にお問い合わせください。

問い。 私の住んでいる町には図書館がありません。県図書館の資料を利用するにはどうしたらいいですか?
答え。 図書館のない町村にお住まいの方は、公民館図書室が、貸し出し・返却の窓口になってくれる場合があります。詳しくはお近くの公民館図書室にお問い合わせください。

問い。 郵送での貸し出しサービスを利用したいのですが?
答え。 障害者手帳などをお持ちであれば、郵送での貸し出しサービスをご利用いただけます。郵送料はかかりません。目が不自由な方には、図書の内容を音声化した録音図書や、大きめの活字で書かれた大活字本を、耳が不自由な方には、手話・字幕付きビデオをご用意しています。

問い。 音訳サービスの内容を教えてください。
答え。 ご希望の図書や雑誌、新聞などを対面または電話でお読みするサービスです。また、必要な部分を著作権法の許す範囲で、録音テープに録音します。音訳は、本館職員及びボランティアが担当します。

問い。 郵送での貸し出しや音訳サービスについての申し込みや相談はどこにすればいいですか?
答え。 宮城県図書館企画担当(電話 022−377−8444、 ファクシミリ 022−377−8484)へご相談ください。

今回ご紹介したものは、図書館で提供している代表的なサービスです。県図書館では、県民の皆さんの多様なニーズに応えるために、他にも様々なサービスを提供しております。
これからもどうぞお気軽にご利用ください。

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図書館 around the みやぎ シリーズ第8回 志津川町図書館 佐々木繁子館長。

 「こんにちは」と元気な挨拶で子ども達が集まって来ます。今日は恒例の「おはなしでてこい」の日です。毎月第4火曜日の3時半から4時半までの一時間、図書館ボランティアや民話の会の皆さんの協力により「はじめのうた」から始まり、「絵本の読み聞かせ」「紙しばい」「昔ばなし」とつづき、折り紙等の「手づくりあそび」「おわりのうた」でさようなら。という活動です。幼児から小学生、付き添いのお母さん、おばあさんの参加があり、楽しく、暖かいひと時を過ごしています。
 また、学校の臨時休業日や週休日のいくつかを「どんどんクラブ」の日とし、「絵本作り」「子ども映画会」「クリスマスリース作り」「おひなさま作り」などの手作り遊びを中心に活動しています。長期休業日には、「みんなのひろば」を開き、「かるた大会」「昔の遊び」「さくらもち作り」などの伝承遊びを中心に活動しています。
 このように、当図書館では、子どもと本との出会いのために、よりよい読書環境を整えると共に、未来の読書人となる子ども達が、気軽に進んで、喜んで図書館を利用する習慣形成のために、子ども向けの企画を意識して計画し実行しているところです。
 勿論、子ども達ばかりでなく、全町民の憩いの場として、生涯学習時代の拠点となる図書館を目ざして、日々努力しております。

志津川町図書館のご紹介。

  • 開館時間。
    午前9時から午後5時まで。
  • 休館日。
    年末年始(12月28日〜1月4日)、臨時休館(8月14日〜8月16日)。
  • 交通案内。
    JR志津川駅から志津川警察署前経由で徒歩10分。
  • 図書館のデータ。
    蔵書冊数 1万6053冊(平成14年3月31日現在)。
    貸出冊数 2万2824冊(平成13年度実績)。
  • 住所 〒986−0763 宮城県本吉郡志津川町汐見町115。
  • 電話 0226−46−2670。 FAX 0226−46−5155。

時空をこえて 貴重書の世界 「生計纂要」。

 『生計纂要』はその内容もさることながら、来歴が興味深い。完成稿である『厚生新編』が官庫の秘書とされたのに、初稿であるこちらは、改題され藩校で活用されたという。
 そもそも『厚生新編』とは、馬場佐十郎・大槻玄沢・宇田川玄真など洋学者が、江戸幕府の命を受け、ショメールの日用百科を翻訳し編み上げた百科事典のことである。翻訳の際底本としたのは、フランス語でかかれたショメールの原著を、さらにオランダ語訳した版であったという。その内容が天文地学・理化学・鉱物・産業技芸と広範囲に及び、特に植物・動物・医療・薬品は項目が多いこと。また、その分量が135冊以上、分冊を含めると200冊余りになることから、明治時代以前における最大の翻訳とされた。また、蘭学が幕府公認の官学になるはじめとなったが、刊行されることはなかった。
 その初稿が何故宮城県図書館に所蔵されているのかというと、訳者の一人である大槻玄沢が、密かに仙台藩の藩庫に納入していたからである。『生計纂要』は全87冊と「生計纂要訳説順次目録」1冊からなる。当時の最新の科学知識である葡萄酒・銅版画・洋紙の製法、エレキテルなどが紹介されており、現在でも用いられている訳語(アラビアゴム、ドロップなど)が多く含まれている点も面白い。

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わたしのこの一冊 「おっぱい おっぱい」 わかやまけん・さく 童心社 1983年。

「赤ちゃんの一番好きなもの」。

 町の図書館で絵本の読み聞かせをしているおかげで、私はこれまで沢山の素敵な絵本に出会ってきました。そのなかでもこの絵本は、山形に嫁いだ娘の出産祝いに戴いた一冊で、やさしい線とシンプルな色使いでいろんな動物の親子が描かれています。特に私の好きな場面は、ぶたの親子のおっぱいタイムの絵で、でっぷり母さんと子ぶたたちの様子がなんともほほえましいものです。
 数年前、ママのお出かけ中に久々に8か月になる孫の子守をすることになりました。早速、読み聞かせをと手にしたのが、「おっぱい おっぱい」の絵本でした。母乳育ちのおっぱい大好き赤ちゃんでしたから、うっかり「おっぱい」と読んでしまったら、ママを思い出すのではと、あわててそれを隠したことがありました。
 秋に産まれた二人目の孫は、ママのおっぱいと「おっぱい おっぱい」の絵本を、しっかりとバトンタッチされたことでしょう。心身ともに健やかに育ってほしいと願うばかりです。

今回のこのコラムは小牛田町読み聞かせボランティア「本のかけはし」代表の萱場節子さんにご寄稿いただきました。
なお、「本のかけはし」は、2002年優良読書グループとして社団法人読書推進運動協議会から表彰を受けられました。

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図書館からのお知らせ。

本館所蔵資料の文化財指定について。

 本館所蔵貴重書が平成15年1月31日に、宮城県指定有形文化財(書籍)の指定を受けました。指定された資料は次のとおりです。

  1. 『禽譜』(11帖3巻)。書名のよみ:きんぷ。
    『観文禽譜』(12冊)。書名のよみ:かんぶんきんぷ。
    (近世最高・最大の鳥類図鑑。)
  2. 『魚蟲譜』(7巻)。書名のよみ:ぎょちゅうふ。
    (近世の科学的で美しい魚類図鑑。)
  3. 『關算四傳書』(474冊)。書名のよみ:せきさんしでんしょ。
    (我が国の和算史上、屈指の資料。)
  4. 『貞観政要』(8冊)。書名のよみ:じょうがんせいよう。
    (官版刊行の先駆けとなった本。)
  5. 『光悦謡本一百番』。書名のよみ:こうえつうたいぼんいっぴゃくばん。
    (古印刷史上、最も美しいといわれる「嵯峨本」。)
  6. 『生計纂要』(88冊)。書名のよみ:せいけいさんよう。
    (江戸幕府の秘本『厚生新編』の草稿。)
  7. 『三航蝦夷日誌』(35冊)。書名のよみ:さんこうえぞにっし。
    (蝦夷地、樺太、国後などの19世紀半ばの探検記録。)
  8. 『北海道風土記』ほか(35冊附図12冊)。書名のよみ:ほっかいどうふどき。
    (北海道と北方領土に関する地誌。)
  9. 『言海』(32冊)。書名のよみ:げんかい。
    (日本最初の近代国語辞典。)

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この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。

「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第13号 2003年3月発行

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