宮城県図書館だより「ことばのうみ」第80号 2025年1月発行 テキスト版

おもな記事

  1. 巻頭エッセイ
  2. 〈特集〉新聞・雑誌室へようこそ
  3. 図書館 around the みやぎ
  4. 図書館員から読書のすすめ
  5. 図書館からのお知らせ

 

巻頭エッセイ『遅咲きの本好き?』 声優  山寺 宏一

 『かいけつゾロリ』が小学生時代にあれば、読書好きになっていたかもしれない―そんな言い訳を考えるほど、私は読書が苦手だった。読むべきとされる名 作も、ちゃんと読んだかどうか怪しいくらいで、いわゆる「読書コンプレックス」を抱えていたのだ。

 ところが、数年前にふと気づいた。多賀城小学校の図書室で夢中になった「ゆかいなヘンリーくん」シリーズは全巻読破していたし、高校時代に友人に勧められた筒井康隆さんの短編もほとんど読んでいた。大人になってからだって、好きな小説なら長編でもすぐに読み終えてしまう。大事なのは、好きな本との出会いだったのだ。

 これまでは、「常識として読まなければ」とか「この作家を読んでおけばカッコいい」といった義務感で本を手に取っていたから、なかなか進まず、読書に苦手意識を持っていたのだろう。気づくのはだいぶ遅かったが、今ではリビングの本棚の前に置いたイージーチェアで、本を読む時間が至福のひとときになっ ている。

 図書館は、好きな本を探すための最良の場所で、役作りの調べ物にも最適だ。この原稿も、近所の図書館で書いている。ここが近いことが、今の家から引っ越したくない理由のひとつになっているくらいだ。

 「本をたくさん読み、知識が豊富で、感性豊かで自分の言葉を持つ人」に憧れてきたが、それを自分に求めるのは難しい。それでも自分のペースで、人生を豊かにする「好きな本」との出会いを楽しみたい。読書が苦手な子供たちには、「大丈夫!好きな本がきっと見つかるぜ!」とゾロリ風に伝えたい。

著者紹介

 山寺宏一(やまでら・こういち)

 6月17日生まれ。宮城県出身。85年声優デビュー。アニメ「アンパンマン」チーズ、ディズニー作品のドナルド・ダック、「アラジン」ジーニー、「新世紀エヴァンゲリオン」加持リョウジ、「ルパン三世」銭形警部の声として知られる。外国映画ではジム・キャリー、ブラッド・ピット、エディ・マーフィー、ウィル・スミスなど数多くの俳優の吹替えを担当している。その他、映画やドラマ、舞台など俳優としても活躍。

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〈特集〉新聞・雑誌室へようこそ

 

 宮城県図書館の3階東側にある新聞・雑誌室では、新聞や雑誌のほか、国から出された行政資料や白書、年鑑などを置いています。新聞や雑誌といえば、読み終えると処分されるものという印象がありますが、宮城県図書館では、これらの資料を長く保存し、みなさまにご利用いただけるよう整理しています。

 今回の特集では、新聞・雑誌室の資料やその利用方法などについてご紹介します。

 

◆こんな資料があります

 新聞・雑誌室には、新聞約670タイトル、雑誌約11,000タイトル、年鑑・年報約3,800タイトル、行政資料約3,160タイトルなど、合計約18,630タイトルもの資料があります。

 これらの資料は、館内でのみご利用いただくことができます。欠号を発生させることなく、大切な資料を後世に残すため、個人の利用者の方に館外貸出は行っておりません。どうぞご理解とご協力をお願いいたします。

 

・新聞

 『朝日新聞』、『日本経済新聞』などの全国紙をはじめ、『河北新報』や『大崎タイムス』などの地元紙、北海道・東北地域のブロック紙、工業や農業、ビジネスに関する専門紙など、開架では約40紙が閲覧できるようになっています。過去の新聞は、マイクロフィルムや縮刷版などにコンパクトにまとめられています。マイクロフィルムリーダーの使い方は最初に職員がご説明しますので、どなたでも簡単に利用できます。どうぞお気軽にカウンターへお声がけください。

 

 ・雑誌

 雑誌については、購入・寄贈を合わせて現在約1,700タイトルを受入しています。一般的な雑誌のほか、大学が発行する研究紀要や、宮城県内に本・支店を持つ金融機関の経営内容などの情報を開示したディスクロージャー誌、企業の環境保護への取組みなどをまとめたCSR報告書なども所蔵しています。

 自由に閲覧していただける開架部分には、購入雑誌を中心に、ご利用の多いものの最近分を配架しています。これ以前のバックナンバーや古い雑誌などは閉架書庫からお出ししますので、カウンターにお申し付けください。

*一部の雑誌については、最新号をカウンター内に置いているものがあります。カウンターにお声がけください。

*宮城県内で発行された雑誌は、3階西側のみやぎ資料室にあります。

 

・年鑑・年報

 『読売年鑑』のような総合的な内容のものをはじめ、会社年鑑、統計年鑑、美術年鑑など、様々な分野の年鑑・年報類をご用意しています。『理科年表』、『朝日キーワード』などもここにあります。

 

・行政資料

 国・地方公共団体やその関連団体などが発行している資料です。代表的なものに、白書類(『環境白書』、『食育白書』など)や統計(『国勢調査報告』など)などがあります。宮城県図書館では、発行省庁別に並べています。

*宮城県および県内自治体発行の行政資料は、3階西側のみやぎ資料室にあります。

 

◆資料や記事を探すには

資料検索端末(館内OPAC

 館内の資料を検索するための専用の端末です。検索して目的の資料を探したら印刷ボタンを押し、出てきた資料請求票の、背ラベル1段目の数字の前に、下記のアルファベットがついていたら、新聞・雑誌室の資料です。

PN:新聞 P:雑誌 PA:年鑑・年報

G:行政資料 PF:外国語雑誌

 

 ・新聞記事データベース

 「あの記事、いつの新聞で見たっけ?」「あれはいつの出来事だっただろう?」そんなときは新聞記事データベースが便利です。館内の端末を使って、『河北新報』(1991(平成3)年8月~)、『朝日新聞』(1984(昭和59)年8月~)、『読売新聞』(1986(昭和61)年9月~)の記事を検索することができます。印刷される場合には、A4サイズのコピー用紙をお持ちください。このほか、CD-ROMDVD-ROMで記事検索が可能な新聞もあります。

 また、年に2回、新聞記事データベースの操作講習会を行っています。実際にパソコンを操作しながら行い、キーボード入力が苦手な方は職員がサポートします。 事前申込制の先着順で、参加費は無料です。 日程などの詳細については、宮城県図書館ホームページの「宮城県図書館からのお知らせ」から、「『図書館使い方講座~データベース操作講習会~』の開催についてのお知らせ」をご確認ください。

 

・様々なデータベース

 雑誌記事のデータベースもあります。『Web OYA-bunko』では、雑誌の専門図書館である「大宅壮一文庫」が所蔵する、明治時代から最新までの主要な雑誌記事の検索が可能です。また、『官報情報検索サービス』では、1947(昭和22)年5月以降の官報本紙、号外、政府調達公告版、資料版、目録の検索・閲覧が可能です。これらのほかにも、CD-ROMなどで、調べものに役立つ様々なデータベースを利用することができます。

 

・レファレンス(調査相談)サービス

 「新聞や雑誌の記事を探している」「こんなことがわかる統計はないか…」といったお問い合わせを受けて、調査研究のために必要な資料の紹介や、資料を探すためのお手伝いをするサービスです。ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にカウンターにお声がけください。

 

◆こんなコーナーもあります

 

・仕事に役立つ「ビジネス支援コーナー」

 3階エレベータ前の26番の書架には、仕事に役立つ資料を集めた「ビジネス支援コーナー」があります。最新の白書やデータブックなどをまとめて配置し、ビジネスに関する情報を探しやすくしています。ご自由にお持ち帰りいただくことができる、中小企業支援の配布用冊子やチラシなどもあります。

 

・ミニ展示コーナー

 カウンター前では、ミニ展示を行っています。季節やイベントなどに合わせ、様々なテーマごとに選んだ雑誌を展示しており、ご自由に手に取ってご覧いただくことができます。新聞・雑誌室をご利用の際はぜひ足を止めてみてください。

 

 

 

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図書館 around the みやぎ

シリーズシリーズ第72回 東北福祉大学図書館 館長 鍛代 敏雄(きたい としお)

 

今年、学園創立150周年を迎える本学の図書館は、福祉関係の図書を中心に各学部の図書を合わせ年間78千冊を受入しています。一週間にすると100200冊が新しく入っており、新着コーナーでは足をとめる学生の姿を頻繁に見ることができます。近年は専門書と一般書の境が薄くなり、学修に資する図書の範囲が広がりました。そのため関連のある図書については可能な限り広く揃えることに力を入れています。“たくさんの図書の中から自分にとって必要なものを選び取る”これが学生にとって大きな力となり、在学中だけでなく今後の人生においても活きるものだと確信しているからです。

 さて、図書館の建物は時代に合わせ、利用者の求めに応じ、増改築を繰り返した歴史があります。それにともない歴代図書館員により館内レイアウトに創意工夫が加えられました。最近では耐震工事により書庫の一部機能を館外へ移す対応も行いました。また、読書バリアフリー法の成立を受け、点字資料やLLブック、大活字本などをまとめた「りんごの棚」を新設し、車いすでも容易に返却できるブックポストの導入もしました。これらは実際に利用する対象ではない学生たちへの啓発にもなっています。

 本学は、この4月から新しい学部「共生まちづくり学部」を開設いたします。新たな学びに向け、図書館でも資料・学修環境の整備を進めていくことになります。学生たちが自分自身のため、社会のため、生きる力をつける手助けをしていく図書館であり続けたいと思っています。

  

東北福祉大学図書館

蔵書数/440,222冊

(令和6331日現在)

開館時間/通常期:午前9時~午後8

長期休暇期間:午前9時~午後5

●休館日/本学の指定する休業日、長期休暇期間の土曜・日曜・休日

住所/〒981-8522 宮城県仙台市青葉区国見1-8-1

TEL:022-717-3309/FAX022-717-3339

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 図書館員から読書のすすめ

1万人の脳を見た名医が教える『すごい左利き』 加藤俊徳 著 ダイヤモンド社 出版

皆さんは右利きですか?左利きですか?

 私は、もともと左利きでしたが、「大人になってから不便な思いをしないように」と、両親から右利きになるよう育ててもらいました。

 とはいうものの、この本の筆者と同じく、そもそも左利きだった幼い頃の私は、右手を上手に動かすことができず、常に自信がない子どもでした。紐を結ぶ、折り紙を折るなど、細かい作業がとにかく苦手で、なぜみんなが何もかも器用にできるのか、不思議でなりませんでした。

 大人になった今でも、不器用なのはそのままですし、頭の中で右と左が分からなくなり、言い間違えることなどしょっちゅうです。

 そんな私が、タイトルに惹かれ、思わず手に取ったのがこの一冊でした。

 御存じの方も多くいらっしゃると思いますが、右脳と左脳は司る機能が違い、利き手に対応する方の脳が優先的に発達します。

 右利きと左利きでは、脳の中で優先的に働く部位や、インプットアウトプットの仕方が違うので、物の見え方・捉え方が違ってきます。どちらかが優秀でどちらかが劣っているということではなく、それぞれの得意分野で、お互いを補完しあうことが大切なんですね。この著書では、このことを脳医学に基づき、平易な言葉で分かりやすく解説してくれています。

 この本を読み終えた後、「『右利きの世界』に順応するため、鍛錬を重ねてきた自分は凄いんだ!」と、一気に自己肯定感が上がりました(笑)。また、左利きの人は「直感」が優れており、それは、脳の使い方が生み出す一つの個性であるということに大変驚きました。その素敵な個性をどう生かしていけばよいのかについても、著書の中では触れられています。

 そして、筆者は、右手を上手く使えない左利きの人たちに対して、「右利きの他人」と比べて落ち込むのではなく、「自分の左手でできること」と「自分の右手でできること」を比べながら、できることを増やしていけばよい、とも語っています。この言葉のおかげで、他人と比較して優劣をつけ、一喜一憂するのではなく、昨日の自分より今日の自分が、少しでも成長できていたらそれでよいのだ、と気づくことができました。

 周りと少し違うということは、視点を変えれば長所になり得るし、長い時間をかけて育まれた後に、思いもよらない才能として開花することもあるのでしょう。

 この本は、主に左利きに特化した内容となっていますが、脳の構造や機能を通して、物ごとを多面的に見ることへの気づきや、自分自身を振り返るきっかけを与えてくれます。右利きの方へもお薦めです。是非御一読ください。

企画管理部総務班 門脇嘉子

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図書館からのお知らせ INFORMATION 

■企画展「宮城県公文書館のお仕事紹介」

 宮城県で作成された公文書は、定められた一定の期間が経過すると廃棄されます。しかし、宮城県の重要な政策の経過、その当時の社会情勢、県民の社会経済活動などの記録が含まれた文書は歴史的・文化的価値を持つ貴重な歴史資料として県民共有の文化遺産となります。今回の展示ではその管理・保存の仕事についてご紹介します。ぜひご覧ください。

・期間 令和61130日(土)から 令和7年3月2日(日)

・場所 宮城県図書館2階 展示室

・お問合せ 企画協力班(0223778444

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この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第80号 2025年1月発行。

宮城県図書館

〒981-3205 宮城県仙台市泉区紫山1-1-1 TEL:022-377-8441(代表) FAX:022-377-8484 kikaku@library.pref.miyagi.jp