宮城県図書館だより「ことばのうみ」第73号 2022年10月発行 テキスト版

おもな記事

  1. 巻頭エッセイ
  2. 〈特集〉図書館資料からみるみやぎの明治時代
  3. 図書館 around the みやぎ
  4. 図書館員から読書のすすめ
  5. 図書館からのお知らせ

 

巻頭エッセイ『旅行計画』 モデル 佐藤 友紀乃

 新型コロナウイルスが流行し始めて数年。「どこか遠くへ旅行に出掛けて気分転換でもしたいけど……」という方も多いのではないでしょうか。そんなとき私は、本を読んで旅行気分を味わうのが好きです。とは言ったものの、私の旅の楽しみ方は作品の世界に没入するものではありません。現実と照らし合わせて楽しむのです。

 たとえば、私が一番好きな作品はハリーポッターシリーズ。この作品は、皆さんご存じの通り魔法使いの物語。もちろん私たちがいる現実世界では“今のところ”あり得ないお話です。ただ、舞台となっている場所はイギリスのロンドン。空想の地名や建物が出てくる中に、時折実在する駅や地名も出てくるのです。本を読み進めながら、「ここは実在するのだろうか」、「実在するのならどのあたりだろうか」と、パソコンやスマホで検索して、見知らぬ土地の地図を眺め、「いつか行ってみたいなぁ」と妄想しながら楽しむのです。

 ロンドンは私の「人生で行きたい場所リスト」の中のひとつ。予定はないけれど、新婚旅行で行くつもりです。ただ最近は、新シリーズの舞台がアメリカであったり、他の好きな作品の舞台にも行きたくなったりと、行きたい場所リストがどんどん増えています。大変です。

 暗いニュースや、「やりたい」を制限されることが多い今だからこそ、好きな本を読み、これからの人生の楽しみをどんどん増やしていこうと、日々新たな世界を求めて本を探しています。

 著者紹介

 佐藤友紀乃(さとう・ゆきの)

 モデル・リポーター・タレントとして幅広く活動中。宮城県仙台市在住。宮城テレビ放送「OH!バンデス」、仙台放送「仙臺いろは」、FM仙台「AirJAM Friday」など、レギュラー番組も多く、CM・スチール・ドラマ・映画など、マルチに活躍している。趣味はキャンプとライブ参戦。

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〈特集〉県制150周年記念 図書館資料からみるみやぎの明治時代

 宮城県は、明治5年1月8日(1872年2月16日)、旧仙台藩を中心とする「仙台県」から改称するかたちで成立し、令和4年(2022年)に誕生150周年を迎えました。これを記念して、当館が所蔵する資料を通じて黎明期の宮城県のすがたを振り返ります。

*この特集は、企画展「図書館資料にみるみやぎの黎明」 (会期:令和4年6月4日から8月28日まで)の展示内容を再構成したものです。

 

◆宮城県の誕生

 明治4年(18717月、廃藩置県が行われ、新仙台藩は仙台県となり、同年11月には仙台・登米・角田の3県が合併し、改めて仙台県が設置されました。明治5年(187218日には仙台県から宮城県へと改称されました。その後も隣接する県との間で再編成が何度も行われ、旧仙台藩領に設置された県名は14にも及びました。最終的には明治9年(1876821日、現在の宮城県の行政区画が確定しました。

 

「宮城県管内全図」(『宮城県地誌提要』宮城師範学校編 宮城県学務課 明治15年(1882))

『宮城県地誌提要』は「管内地理ノ概略ヲ誌シ以テ小学生徒ノ誦読ニ便スル」(「凡例」より)ことを目的とした教科書です。巻頭の折込図「宮城県管内全図」では国名・郡名や主要な地名のほか、県庁・鎮台等の位置が記号で示されています。郡ごとに色分けされていますが、宮城県域ではない岩代国伊達郡も着色されています。

 

◆参事から知事へ

 明治4年(187111月、旧館林藩士で登米県大参事兼通商権頭の塩谷良翰(しおのや りょうかん)が仙台県参事・県令心得に就任しました。塩谷は地租改正事業等に着手しましたが、6年(18732月免官になりました。代わって旧長州藩士で入間県参事の宮城時亮(みやぎ ときすけ)が参事(のち権令)として赴任し、地租改正事業、士族授産事業などに取り組みました。宮城は明治11年(18786月県令に昇格した後、7月には願いにより免官となりました。

 その後、旧福井藩士で内務権大書記官の松平正直(まつだいらまさなお)が明治11720日、権令に任じられ、同25日県令に昇格しました。明治19年(18867月には地方官官制により、県令を改めて初代知事となりました。明治24年(1891)熊本県知事に転任するまで、松平は1210か月にわたり在任し、県民からの信頼も厚かったといわれています。転任後出版された『松平正直君治績概要』では、県会・郡市町村・土木・勧業などの項目別に、在任中の松平の業績が列挙されています。

  

「内務次官松平正直君」(『太陽』51号 博文館 明治32年(18991月)

 

◆政治家たちの肖像

 明治11年(1878)に公布された府県会規則に基づき、明治12年(18791月県会議員選挙が行われ、44名の県会議員が選出されました。第1回県会は宮城師範学校を臨時議場として、明治12320日から1か月間にわたり開催されました。県会議事堂は明治15年(1882)、県庁舎と道路をへだてた表小路に新築落成し、同年の県会から使用されました。

 増田繁幸(ますだ しげゆき)は、仙台藩大参事・一関県参事などを歴任したのち、第七十七国立銀行の創立に携わったほか、県会開設とともに初代県会議長となり、地方制度創立期に指導的役割を果たしました。明治22年(1889)、大日本帝国憲法公布と同時に衆議院議員選挙法・貴族院令が定められ、第1回衆院議員選挙が明治23年(189071日に実施されました。

 宮城県では増田繁幸、 武者伝二郎(むしゃ でんじろう)、十文字信介(じゅうもんじしんすけ)、 熱海孫十郎(あつみ まごじゅうろう)、 遠藤温(えんどうおん)の5名が選出されました。また、宮城県関係の貴族院議員として、  伊達宗敦(だて むねあつ)(男爵互選議員)、  富田鉄之助(とみた てつのすけ)(勅撰議員)、 金須松三郎(きす まつさぶろう)(多額納税議員)が選出されています。

 

国会議員候補者の肖像(『宮城県国会議員候補者列伝』藻塩舎主人(佐々木泰)著 晩成書屋 明治23年(1890))

 

◆軍隊と戦争

 明治4年(1871)、政府は東山道鎮台を東北に、西海道鎮台を九州に設置し、東山道鎮台の本営は石巻に置くこととしました。同年8月に2鎮台にかわって、東北・東京・大阪・鎮西の4鎮台が設置されました。明治6年(1873)東北鎮台は仙台鎮台と改められ、明治8年(1875)には連隊制度に基づき歩兵第四連隊がおかれました。明治21年(1888)には、仙台鎮台が第二師団と改称されました。

 仙台鎮台時代の出兵として、明治10年(1877)の西南戦争では歩兵第四連隊の二個中隊が出征したほか、旧藩の士族が巡査等の身分で徴募され、宮城県からの応募者のうち700名が新撰旅団などに編入されました。また海外出兵として、日清戦争では明治27年(18941029日から、第二師団の各部隊が長町停車場から出征し、遼東半島等での戦闘に参加しました。日露戦争では、明治37年(1904216日、第二師団在仙部隊の観兵式が宮城野原練兵場で行われ、翌17日以降長町停車場から出征しました。  

 

西南戦争の戦況を報じる記事(『仙台新聞』明治10年(1877316  相愛社)

 

◆新しい学びの場

 明治5年(1872)に学制が発布され、桃生郡鹿又小学校が明治6年(18733月に設立されたのをはじめとして、明治6年中に226校の公立小学校が当時の宮城県内に設立されました。

 中等教育機関としては、明治7年(1874)に官立宮城外国語学校が設置され、県への移管や名称の変更を経て宮城県尋常中学校となりましたが、明治21年(1888)に廃止されました。その後、私立の宮城英学校(明治19年(1886)東華学校に改称、明治25年(1892)廃止)を引き継ぐ形で宮城県尋常中学校が明治25年(1892)に再発足し、明治37年(1904)には宮城県立仙台第一中学校と改称しました。明治33年(1900)には宮城県第二中学校が設立され、明治37年(1904)に宮城県立仙台第二中学校と改称しました。

 また宮城女学校(明治19年(1886)開校、現宮城学院)、尚絅女学校(明治25年(1892)開校、現尚絅学院)、仙台女学校(明治26年(1893)開校、現仙台白百合学園)がキリスト教系の私立女学校として設立され、女子中等教育機関の充実に大きな役割を果たしました。

 

「仙台市内学校幼稚園一覧」(『宮城県治要覧』宮城県編   宮城県   明治41年(1908))

 

◆新聞と雑誌

 県内で発行された最初期の新聞として『官許宮城新聞』(明治6年(18734月創刊),『官許東北新聞』(明治7年(18746月創刊)があります。『官許東北新聞』は旧仙台藩士  す だ へい ざ え もん須田平左衛門らが興した相愛社から発行され、一般内容の記事のほか政府の布告・布達も掲載されていました。相愛社は子ども向けの『仙台 こど も  童蒙新聞』(明治10年(18776月創刊)も発行しています。

 明治10年代以降、自由民権運動の高まりとともにさまざまな新聞や雑誌が発行されました。政治評論や演説筆記を中心とした『宮城政談雑誌』(明治14年(188112月創刊)は民権結社である宮城政談社が発行した雑誌です。また、大同団結運動のなか、代言人らによって結成された抱一館の有志が設立した時論社による雑誌として、立憲政体の確立を主張した『時論』(明治21年(1888)創刊)があります。

 明治30年(18971月には、『河北新報』が創刊され、宮城県の代表的な新聞のひとつとなりました。また、『仙台報知』(明治32年(18995月創刊、のち明治39年(19063月に『仙台小間物商報』と改称)など実業界の情報を伝える新聞も登場しました。

 

『官許東北新聞』(第1号(明治7年(187465日),第7号(明治7年(1874918日)  東北新聞社)

 

《参考文献》

宮城県史編纂委員会編『宮城県史 3』宮城県史刊行会, 1964

宮城県史編纂委員会編『宮城県史 7』宮城県史刊行会, 1960

宮城県議会史編さん委員会編『宮城県議会史 第1巻』宮城県議会史編さん委員会, 1968

宮城県議会史編さん委員会編『宮城県議会史 第2巻』宮城県議会史編さん委員会, 1974

宮城県教育委員会編『宮城県教育百年史 第1巻』ぎょうせい, 1976

仙台市史編さん委員会編『仙台市史 通史編6』仙台市, 2008

仙台市史編さん委員会編『仙台市史 特別編4』仙台市, 1997

仙台市史編さん委員会編『仙台市史 年表・索引』仙台市, 2015

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図書館 around the みやぎ

シリーズ第65回 東松島市図書館長 館長 冨士原 郁子(ふじわら いくこ)

 東松島市図書館は昭和30年、矢本町立図書館として設置され、その後平成5年、現在地に単独の図書館施設として開館しました。平成174月に矢本町と鳴瀬町が合併し、矢本町立図書館から東松島市図書館と改称しました。現在は、本館と図書配本所として4か所の市民センターで構成されています。

 平成23年東日本大震災では甚大な被害を受け、図書館では市民の被災体験を映像として記録·保存し後世に語り継ぐことを目的に、平成24年に「ICT地域の絆プロジェクト」を発足しました。これからもいろいろな情報を発信する場として、図書館の役割は重要だと考えております。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行から、令和2年よりオンライン予約を開始し、多くの方に御利用いただいております。

 令和43月の福島県沖地震では、図書の9割が落下、天井が湾曲し書架の破損などの被害があり、復旧工事のため3か月半の臨時休館となりましたが、71日より開館することができ、現在は通常開館しております。

 休館中は市民の皆さんから、たくさんの温かい声をかけていただき、改めて図書館の運営にあたり、市民の皆さんから愛される図書館として、地域に密着し、親しまれる図書館になりたいと願っております。

 

東松島市図書館

    数/135,274冊(令和4331日時点)

開館時間/火~金曜日:午前10時~午後6

土·日·祝日:午前10時~午後5

  • 休館日/毎週月曜日 ※祝日にあたる場合はその翌日、毎月最終金曜日(図書整理日)※祝日にあたる場合はその前日、年末年始、蔵書点検期間

住所/〒981-0503  宮城県東松島市大溜11

TEL:0225-82-1120/FAX0225-82-1121

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 図書館員から読書のすすめ

『そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生』 横石 知二【著】ソフトバンククリエイティブ【出版】

 葉っぱを売ることで、元気になった町があります。徳島県中部にある上勝町です。様々なメディアに取り上げられ、有名になった葉っぱビジネス、彩(いろどり)事業ですが、私が初めてこの「葉っぱ」を知ったのは10年ほど前のことです。当時、神奈川の大学に通っており、地元である宮城に戻ろうかと考えていたころでした。しかし、帰省する度にどんどん寂れていく地元に対して、どうにかならないものかと思っていたところ、父から「葉っぱを売って元気になった町がある」と教えられました。それまでは歴史小説と昆虫関連の本しか読んでいなかった私でしたが、その「葉っぱを売る」という強烈なフレーズがいつまでも頭に残り、この本を読み始めました。

 この本には上勝町という徳島県で一番小さい町で改革を起こした人々の姿が描かれています。その改革の仕掛人が著者の横石知二さんです。当初、上勝町には仕事がなく若者もいない町でしたが、横石さんは上勝町の豊かな自然を活かし、価値のないとされていた葉っぱで、「つまもの」市場を作り上げました。そして町に新しい産業ができたことで、町の人々は生きがいを取り戻していきます。この彩事業は、女性と高齢者を主役にしたり、高齢者にパソコンを使わせたり、横石さんの様々な工夫と努力で成功していきます。

  地域活性化が叫ばれて久しいですが、横石さんのように自分たちの町を何とかしていきたい、という強い情熱を持っている方はどのくらいいるでしょうか。この本は、人口減少と少子高齢化が着実に進む地方で、どのように生きていくのか1つの成功例を示しており、今後の地方のあり方(姿)を改めて考えさせてくれる作品といえるでしょう。「視点を変えれば、田舎は超条件有利地域」。横石さんの言うように地方はまだまだ可能性に満ち溢れているのかもしれません。

 この本は、私が地元に抱いていた不安を希望に変えてくれた一冊です。上勝町の「葉っぱ」を知っている方も、知らない方にもお読みいただければ幸いです。

資料奉仕部 資料情報班 青山 大祐  

図書館からのお知らせ INFORMATION 

■企画展「みやぎのスポーツ -マイナビ仙台レディース誕生までの歩み-」

2階展示室にて、「みやぎのスポーツ -マイナビ仙台レディース誕生までの歩み-」を開催しています。「マイナビ仙台レディース」の紹介を中心に、宮城県のプロスポーツチームについて展示しています。入場は無料です。ぜひお越しください。

  • 期間 令和493日(土)~1120日(日)
  • 時間 宮城県図書館2階 展示室
  • お問合せ 企画協力班(022-377-8444

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この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第73号 2022年10月発行。

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